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キセイジジツ
第7章 告白

「元兄ちゃん。今はこのアイスにハマッてるの?」

コーヒーのカップを持ち上げながら尋ねると、元は「うん」とうなずいてスプーンの動きを止めた。

「ウマいだろ?美咲(みさ)が教えてくれたんだ」

普段は歯を見せて笑う事のない元は、アイス関連の時だけはニカッと歯を見せて爽快に笑う。

ーーー美咲さん、いい仕事しましたね。
最高の笑顔を引き出してますよ。……ん?あれ?

元の婚約者である美咲を心で誉めつつ、ここ数日間顔を合わせてない事に気づく。

「元兄ちゃん。美咲さんいないの?」

何も考えずに尋ねると爽やかな笑顔は一変し、口角を上げたニヤリ顔に様変わりした。

「あぁ、美咲は……」

そこで言葉を止めると何かを思い出しながら「デキればいーけど…」と意味不明な事を言っている。

「え、何?」

私が眉をひそめて元を見つめると、ニヤリ顔のまま元はサラッと話題を変えた。

「今日は仕事でいないよ。それより、話って?」
「それなんだけど……」

いざ自分の話題となると口ごもる私はどこから話すべきか迷っていた。

そんな私の迷いを感じとった元は優しい微笑みを私に向ける。

「悩み事か?ゆっくりでいいから話してみろ」
「うん。実はね…」


私は自分の夢の事、真人から聞いた男の子の事、その男の子の事を元に聞く為に秦家に訪れた事を順に話していった。

元は黙ったまま私の話を聞いている。

「……って感じでね、元兄ちゃんが頼りなの。男の子の顔とか覚えてる?」

「うーん、そうだなぁ……」

元はソファーにのけ反って目を閉じている。


ーーーやっぱり10年以上も前の事、さすがの元兄ちゃんでも覚えてないよねぇ…

私がアイスのカップへ視線を落として、はぁと小さくため息を吐いた時、元が勢いよく前のめりの体勢になった。

「…そういえば、その子の手のひらに大きなホクロがあったような気がする」
「ホクロ?」

「あぁ、手のひらにホクロなんて珍しいなーって思ったのを思い出した。しかも大きめだったからな、間違いない」

元は目に力を込めて、断言した。

昔から元の言う事に間違いはなかった事や元の記憶力の良さを知っている私は、それは本当なんだと信じる事が出来る。

「ホクロかぁ…」

ーーー手のひらって見えるようで見えにくい場所だしなぁ。

どうやって探すか、それが問題だ。
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