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キセイジジツ
第7章 告白
「えっと……」
悠里から見つめられた事で長田はこれから言うべき言葉を忘れてしまっていた。
そこに助け船を出すのはもちろん悠真。
「悠里!」
「えっ…」
妄想の世界へイッた悠里の肩を掴んで揺さぶり、現実へ引き戻す。
「長田さん言いにくいみたいだから俺が代わりに言うけど、悠里に書道教室のアシスタントを頼みたいんだって」
「…アシスタント?」
「助手と言うか…お手伝いみたいなもんだよ。アシスタントさんが辞めて困ってるんだって。だからこっちにいる間、暇な時だけ手伝って欲しいらしいよ」
「そうなんだ…」
ーーーでも手伝いって何するんだろ?
私の考えを読んだ悠真が言葉を続ける。
「手伝いって言っても教室の準備から生徒達の指導、そして後片付けくらいで簡単みたいだし、どうせこっちいても俺達暇だろ?」
「俺達?」
「そう、俺達。悠里が手伝うなら俺も付き添うし、書道好きな悠里にはいい話だと思うけど。どう?」
「うーん……」
ーーー夢の男の子探しもあるしなぁ…
お手伝いしたいけど…迷う。
「曜日は月・水・金の週3で時間は午前か午後のどちらかでいいらしいから、一日丸々潰れるって事にはならないしさ……何より生徒から『佐田先生』って呼ばれるんだよ?いいでしょ?」
そう言って悠真はニヤリと笑う。
ーーー佐田、先生かぁ…いいかも…
「やる!やります!やらせてください!」
悠里は勢いで長田の手をギュッと握る。
顔を近づけて目を輝かせているのを見る限り、長田の申し入れ(本人から聞いてないけれど)を受け入れる体勢バッチリだ。
逆に今更『やっぱり手伝わなくて大丈夫』と言っても聞く耳を持たないだろう。
「お、お願いします…」
長田は少し頬を染めて悠里の顔と握られた手とを交互に見つめている。
「じゃー決定って事で。悠里、長田さんと連絡先交換しときなよ」
「あっそうだね。でも…長田さん交換するの大丈夫ですか?」
悠里が携帯を鞄から取り出しながら心配そうに尋ねる。
「どうして?」
「ほら…彼女いると迷惑じゃないかなって…」
長田に彼女がいるものだと思い込んでいるようだ。
「いやっ俺彼女いないから全然っ大丈夫!」
「そうなんですね、よかったです!」
悠里が可愛く微笑む。
長田の頭に疑問符が浮かぶ。
ーーーその'よかった'はどういう意味?