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キセイジジツ
第7章 告白

健に後ろから抱きしめられている。

私は聞きたいような、聞きたくないような葛藤を抱えて黙ったまま泣くのを我慢していた。

そして健も黙ったまま私を更に強く抱きしめる。

「悠里……」

健の切なげな声が漏れる。

「変なとこ見せてごめん…」

ーーーごめん?

「あいつとはもう何もないんだ」

ーーーもう?

「元カノで……ヨリを戻したいって言われてるけど、戻すつもりはない」

ーーー元カノ…

「だから誤解しないで」

ーーー誤解なの?


「悠里…こっち向いてよ」

私は首を横に振って目を閉じる。

「泣いてるの?…顔見せてよ…」

健が私の肩を掴んで無理矢理、健の方に体ごと向けさせた。


両頬をそっと包まれて反射的に目を開くと…
目の前にはハの字に下がった眉と、少し潤んだ瞳。

健の方が泣きそうな顔をしていて私は息を呑んだ。

「悠里、俺を信じて。俺は悠里だけだから」

ーーー私、だけ?

「ほ…んと…?」

健を真っ直ぐ見つめて尋ねると、健はゆっくりうなずいた。

「本当だよ。悠里だけ愛してる」

「っ……」

私の瞳から静かに涙が流れ落ちて、健が指で拭う。

「こんな風に抱きしめて、キスをして、愛し合いたいのは悠里だけだよ」

そう言って健は私にキスをした。

軽く触れるだけのキスを何度も私にくれた。


「今すぐ悠里を抱きたいけど…こんなとこじゃ嫌だから我慢するね」

優しく抱きしめて、頭と背中を撫でてくれる。

健の吐息が頭から全身へ伝わる。

愛されてるーーそう感じた。


ーーーでも。

どこか漠然とした不安な気持ちが残っている。


ーーー信じたいけど…

私は健の表側しか知らない。


ーーー聞くのが怖い…

私が知らない健の裏側。


それを聞いても私は耐えられるだろうか。

健の事を愛してると言い切れるだろうか。


「悠里がいないと生きていけないよ…」

健の甘い囁きが私の思考を捕まえる。


ーーー今だけ。…ううん、その時が来るまで。

健の背中に軽く爪を立てる。

そんなのは大した痛みではないだろう。


ーーーその時まで信じてみよう。
健の事も、自分の事も。


「私も…たけちゃんを愛してるっ…」

今、この瞬間だけは私達二人だけの世界。
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