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キセイジジツ
第8章 正夢

長田は今の展開に困惑していた。


元々この場には悠真もいる予定だったが、当の悠真本人から数時間前に「二人で頑張ってください」と連絡が入った。

そんなあからさまなドタキャンだと悠里にバレるだろ…と後ろめたさから謝ると、悠里も疑う事なく悠真の行いを謝ってきた。

良い子だなぁ…と思ってると携帯に着信。

嫌な予感を感じて画面を見るとーー健の名前。
今は出るなーーと本能的にマナーモードへ切り換えた。

そして自宅に到着すると悠里は所々で驚きを隠せない顔をしながらも冷静な態度だった。

落ち着いてるなと思ったのは束の間で、教室へ案内した途端に眉を下げて不安そうな表情を見せていた。

安心させたい気持ちと、からかいたい気持ちを抱きながら言葉をかけると…悠里は何も言えないのか黙ってこちらを見上げていて、それがまた可愛らしさを増していた。


教室の準備は悠里に任せて、今日のお手本の用紙を用意していると突然の雷雨。

最初は何の音なのか分からなかったが縁側に近づいてみると勢いよく雨粒が地面を打っていた。

一日曇りで雨は降らないはずじゃ?と今朝の天気予報を思い出しながら教室へ戻るも悠里の姿はなくて、自分が任せた仕事の内容から姿があるはずの場所へ足を進めた。

勝手口を引いて開けると雨に濡れた悠里の姿がすぐ目に入り、一瞬ドキッとしたもののタオル!と思わず腕を引いて歩き出してしまった。

俺何してる?!と思いながらも今さら手を離すのも変な気がしてそのまま脱衣場へ向かい、バスタオルなどを渡そうと振り返りーー悠里の姿に驚いた。

薄い水色のワンピースの胸元が雨のせいで肌にへばりつき下着が透けていたのだ。

悠里の顔が自身の胸元へ下がり…顔を赤く染めて腕で自身を抱きしめた。

このままじゃーー

悠里から視線を逸らしてバスタオルを肩にかけてその場をあとにした。

母さんの服でいいかと思いながら両親が使ってた部屋へ向かうとタンスを引いて適当に選んだ。

それを渡した時の悠里の表情は穏やかで、何となく気に入ってくれたんだなと感じた。

居間に行き、母さん助かったよ…としみじみ思いながらお茶を啜りつつ、なかなか居間へ来ない悠里が気になってきた。

様子を見に脱衣場へ向かいノックしても返事はない。

そーっと開けると悠里の姿はなく、服とブラジャーだけが乾燥機の風でなびいていた。
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