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キセイジジツ
第8章 正夢

男なら誰でも困惑するだろ……


ワンピースがハンガーに掛けてあるのは理解出来たが、なぜブラジャーまでハンガーに掛かってあるのか。

ーーーこれは…悠里ちゃんの、だよな…

白の下着を凝視しながら俺の思考は一つの結論へと辿り着く。

ーーー悠里ちゃん、今ノーブラ?!!

「まじか……」

両手で顔を隠しながらその場にしゃがみ込んだ。

ーーー女性ものの下着の一つや二つ見たくらいで驚かないけどさぁ……これが身近な子のだと話は違うでしょ…

必然的に悠里の顔や体を思い浮かべる。

全体的に引き締まってるが胸やお尻など出るべきところは出ていて、顔に残るわずかな幼さや年齢を考えるとまだ子供なのに、体つきは確かに女だ。

ーーー下着まで濡れてたにしても外しちゃうかな?!自分ちならいいけど男の家でノーブラはダメでしょ…はぁ……

悠里の危機感のなさにため息を吐いて脱衣場を出ると、自分の部屋の襖が開いたままな事に気づく。

ーーー閉きっぱなしだったか…

近づいて襖に手をかけると部屋から何かが擦れるような音が聞こえた。

反射的に中を覗くとーー俺のベットに腰かけてアルバムを見ている悠里の姿。

「悠里ちゃんっ!」

大股で悠里の目の前まで歩き、大きく声をかけながらアルバムを奪いあげる。

「勝手に見ちゃダメでしょ!」

ーーーアルバムなんか恥ずかしさの他に何もないし。

「あっ…ごめっなさい…襖が開いててっアルバムがあってつい…勝手にごめんなさい!」

悠里は急にアルバムが奪われた事で俺を見上げながら、慌てて謝罪の言葉を口にした。

声を少し荒げた事で本気で叱られたとでも思ったのだろうか。

俺を見上げるその瞳は激しく揺れている。

「いやっ……俺そんな怒ってないからね。アルバム見られて恥ずかしいだけだから」
「えっ?」

瞳の揺れは止まったが、次は疑問の色を浮かばせている。

「特に中学の方ね。高校のはまだいいけど、中学のは顔が子供過ぎてさ…」

取りあげたアルバムに目をやりながらため息を吐くと、手と手がパチンッとぶつかる音がした。

「中学と高校じゃ雰囲気が違いますよね!長田さんも健兄ちゃんも中学では可愛い感じで……」

ーーーチェック済みだったか…

「なのに健兄ちゃんってば高校から髪染めてパーマかけて全然違う人になってるし……」

悠里が健を思い出すように笑う。
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