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キセイジジツ
第8章 正夢

「えっ…?」

長田に支えてもらいながらソファーに座り直し、その大きな両手を握る。

確かに男性の手なのに…なめらかで細長く、決してゴツゴツしていない。

右手の中指には勲章と呼べるような'筆たこ'。

まだ小さいけれど長田の生きざまがそこに見える気がした。

「私…この手の感覚を覚えてます。正確には'思い出した'ですけど。うんと昔…私が5歳の頃に私たち会ってませんか?」

疑問符をつけて尋ねたのは、まだ完璧に記憶を取り戻した訳ではないし、確信するのにはあと一歩の疑問が残るから。


「私昔からある男の子と結婚の約束をする夢を見てたんですが、ずっとそれを夢だと疑わなかったんです。でも本当は現実にあった事だって周りから聞いて…」

ーーーたけちゃんだといいのに、なんて思うなんて。

健の焦げ茶色の瞳を思い浮かべる。

ーーーあの瞳じゃなかった。


「でも男の子の顔も名前も私には分からなくて、どうやって探すべきか悩んだんです。決定打の見つけ方は分かってるんですが……」

ーーー元兄ちゃんに教えてもらったから。


「ここまでで私の直感は間違えてるんでしょうか。偶然が重なっただけで、長田さんと男の子は他人の空似なんでしょうか?」

長田は私を見つめて黙ったまま、何か考えているようだ。


「さっきの『安心して。キミが嫌な事はしないから』って言葉もあの時『結婚しようね』って約束をした時に私に言ってくれましたよね。あの時の私がどれほどその言葉に助けられたか…」
「…覚えてるの?」

目を見開いて私に尋ねる。

「思い出せたのはごく一部だけです。
でも昔から口には出してなかったんですが……いつか結婚するなら、私が嫌がる事をしない誠実で優しい人と…と心の奥で思ってたんです」

ーーーそう、結婚するなら。


「長田さんはどこからどこまで覚えてますか?」

真っ直ぐに長田を見つめて耳を澄ませる。

一語一句を聞き漏らさないように。

「俺は悠里ちゃんの事……っ…」

長田の口から言葉が零れた時ーー私の携帯が鳴り響く。

一気に緩んだ空気を感じながらソファーの前のテーブルに視線を移して画面を見る。

そこには、健の名前。

「っ……!」

長田も携帯を覗き込み動きを止めるが…すぐに私へ視線を戻す。

何も言わないけれど解る。

今はーー電話に出るべきなのだと。
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