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キセイジジツ
第9章 思惑

「もしもし…」

「……はっ……はぁっ……」

恐る恐る電話に出ると耳に流れてきたのは切なげなため息のような甘い声。

ーーーえ?…たけちゃん?

体中が強ばって言葉を出す事が出来ない。

「ゆっ……り……」

ーーーこの声……たけちゃんどうしたの?!

「ごめっ…ゆうっり……ごめんっ……」

ーーーごめんって…何に謝ってるの…?

状況を理解出来ずにいると「ふんっ…」と誰かが鼻で笑う音がした。

ーーー誰?……まさか、マナさん?

私の予想は当たっていて女が甘ったるい声を出した。

「もしもしぃ~?ゆうりちゃん~?」
「は…い」
「今日の昼間はどぉ~も。マナで~す。マナねぇ、ゆうりちゃんと話してみたかったのぉ」
「え?」
「だから健に電話してもらって代わってもらったんだ~驚いたぁ?」
「えぇ、まぁ…。でもどうして私に?」

愛想なく返事をすると女は声を高らかに笑った。

ーーー何がおかしいんだろう?

私は女が笑いを止めるのを待つしかなかった。

「ふふっ…おかしかったぁ。…あのねぇ、ゆうりちゃん。マナと健…今どこにいると思う?」
「え?どこって言われても…」
「私たちね、今ラブホテルにいるの」
「っ……!?」

ーーーラブホテル?…ってあのラブホテル?!

「な…んでっ…」

携帯を強く握り締めて震える声を出す。

隣にいる長田が顔を覗き込んできて何か言いたげな表情だけど、それどころではない。

「私たち今日久しぶりに会ったんだけど~健ってばマナに会いたいって言ってくれたの。マナの体の感覚が忘れられないって。もうマナね、すっごく嬉しくて早く健と一つになりたくて…」
「やめてっ!嘘つかないで!」
「嘘じゃないもん。本当だよ~!……あんっ……今だって健のオチンチンはマナの中に入ってるんだよぉ?」
「え…」

ーーー今…何て言ったの、この人…

「硬くなったオチンチンでマナを下から突き上げて…んんっ……」
「……そんなの信じない……」
「それじゃぁ~証拠を見せてあげる」
「…証拠?」
「マナの言葉で信じられないなら、自分の目で確かめたらいいわ。一度電話切るね~」

そう言って女は電話を切った。

携帯を耳にあてたまま動けないでいると、メールの着信音。

ゆっくりと携帯を扱ってメールを開く。

「っ……!!?」

健の信じられない姿が目に写った。
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