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キセイジジツ
第9章 思惑
「……分かりました。
私もこのまま健兄ちゃんとの事を先延ばしには出来ません。
知るのは怖いけど…すべて聞いてみます。
……真人兄ちゃんに言われたんです。
あっ真人兄ちゃんって私の兄で、夢の事を現実の事だと教えてくれたんですけど、その時に
『悠里が好きなのは`優しい従兄弟`として見てきた健なんじゃねぇか?
健にも裏の顔がある。それを知っても健の事を好きだと言えるなら認めてやる』
って言われて、確かにって思いました。
近くにいて知ってるつもりだったけど…
健兄ちゃんがどんな学生時代を過ごして、どんな友達がいて、どんな女性と付き合ってきたのか、どんな事で悩んだり笑ったりしてきたのか、
私は全然知らないなって。
正直、それに気づいてショックでした。
この気持ちは勘違いなのかなって。
でも認めたくなくて…健兄ちゃんに聞きたいけど聞けなくて…今思えば、ずっと自分の気持ちに目を背けてた気がします」
長田がうなずくのを見て言葉を続ける。
「長田さんが夢の男の子で良かった。
夢を見る度に『健兄ちゃんならいいのに』って思ったりもしましたけど、よく考えればその子が健兄ちゃんなら忘れるはずないですもんね。
夢だと思ってたから深くは考えなかった。
だけどそれは現実の事だと聞いて…
少し胸が踊りました。こんな事言ったら失礼だと思いますけど…少女マンガみたいな展開だなって」
「ははっ…確かにね」
長田が気持ちよく笑ってくれる。
「そしてさっき左頬を触られた時に長田さんと男の子は同じ人なんじゃないかと思いました。
健兄ちゃんにも触られるんですけど…何となく夢とは違うなって思ってたんです。
極めつけは長田さんの一言です。
昔から私は`結婚するなら誠実で優しい人`じゃなきゃ嫌と思ってまして、
恥ずかしい話になりますけど…
ウチのパパは女癖が悪くていつもママは泣いていたから、そのせいで私はパパみたいな人は嫌だと思ってたから`誠実で優しい人`が良いと思うんだと…
でも長田さんの一言を聞いて思い出したんです。
あの時『けっこんしようね』と約束したあとに男の子が『安心して。キミが嫌な事はしないから』って言ってくれた事を。
こんな男の子もいるんだなぁって思ったんです。
周りには意地悪な男の子が多かったので…
これが今のところ私が覚えているすべてです」