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キセイジジツ
第9章 思惑
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「…そっか、話してくれてありがとう。
悠里ちゃんの気持ちが聞けて良かったよ。
あ、ちょっと待ってね、お茶取ってくるから。
……お待たせ。そんな悠里ちゃんにお礼と言うか、お返しのつもりで話しておきたい事があるんだけどさ」
雑炊を食べ終えて空になった皿を流しに持っていき、お茶をコップに注いでくれながらそう切り出した。
「実は俺、真人さんと会ったんだ」
「えっ!」
「ふふっ…やっぱり知らなかったんだね。
まぁ悠里ちゃんに言うなって言われてないし、いいかな。
その俺達が会ったあとには続きがあったみたいで、悠里ちゃんは幼いながらも男の子…俺の事を気にしてたみたいで、真人さんにだけ『あのおとこのこにあいたい!』って言ってたみたいなんだ」
「…そうなんですか?」
ーーーそんな記憶はないなぁ。
「覚えてないのも無理はないよ。まだ幼かったんだし。
でね…真人さんはあまりにも悠里ちゃんがしつこく言うから次の年の夏に悠里ちゃんを連れて夏祭りに来たらしいよ。…ビックリでしょ?
でも結局は俺を見つけられなくて悠里ちゃんは泣いたんだって。
そんな悠里ちゃんを見て真人さんは俺の存在を忘れさせようと『きっと男の子は夢の中に出てきたんだよ』と言ったみたい」
「えっ…」
「それで辻褄が合うでしょ?
俺がどれだけ探しても悠里ちゃんを見つけられなかった事と、悠里ちゃんが俺との事を夢だと信じていた事がさ。
真人さんの思惑通り、悠里ちゃんはそれから俺の事を一切口にしなくなったみたいで、真人さん自身もそんな幼い頃の自分の一言なんてすっかり忘れてたみたいなんだけど、
悠真くんから俺の事や悠里ちゃんの夢の事を聞いて思い出したんだって。
それで悠真くんを通して連絡くれて会う事になって」
「えっ…でも悠真は何で…お兄ちゃんがいないの何でだろうって悠真も言って……」
「悠真くんは俺からも真人さんからも口止めされてたんだよ。
ごめんね、悠真くんの事許してあげてね」
ーーー悠真のバカ……。
「真人さんはかなり責任を感じてた。
『俺の軽率な行動で二人を引き離す事になって…』って。
でもそれは何か違うなって思った。
もし次の年にすんなりと悠里ちゃんに会えてたら、俺は悠里ちゃんの事をここまで好きになってたかなって。
たぶん会えた事に満足してそれで終わったんじゃないかって思うんだ」
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