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キセイジジツ
第9章 思惑
「どういう事ですか?」
長田の言ってる事がイマイチ理解出来ない。
「何て言ったらいいのかな…うーん…
あれだね、『会いたくても会えない』という`焦れったさ`が俺の愛を育てた感じ」
「焦れったさ、ですか…」
「そう。例えば…何にしてもさ、欲しいものを何の苦労もなく手にしたら、ありがたみってもんがないでしょ?
その反面、苦労して手にしたものはすごく大切にしようと思う。
人間ってそんなもんなんだよ。
だから真人さんに真相を聞いた時、俺はこれで良かったんだと思ったんだ。
どんなにカワイイ子やキレイな子に誘惑されても、悠里ちゃんの事を思い出すだけで留まる事が出来たし…俺は悠里ちゃんが運命の相手だと信じてたからね。
まぁ一度会っただけなのによくそこまで言えるねって言われるかもだけど…
それだけ俺にとって悠里ちゃんは特別だったんだ。
実際…悠里ちゃんの事は見た目も中身も想像に頼るしかなかったけど、実際に会ってみて悠里ちゃんは想像を超えてたし、あの時の約束を叶えたいって思った」
「約束?」
「うん、大きくなったら結婚しようねってやつ。
俺が今一人だから余計そう思うのかもしれないけど…悠里ちゃんと結婚したいって家族になりたいって思ったんだ。
……こんな事言ったら気が早すぎるプロポーズみたいになるけど、俺のこの気持ちに嘘はないし何年経っても悠里ちゃんを大切にするよ。
もちろん悠里ちゃんの周りにいる人達も大切にするから安心して。
……キミが嫌な事はしないから」
「あっ……」
「ふふっ」
長田がイタズラッ子のように笑う。
「でも……俺の気持ちを押し付けたりはしたくないから、俺への情けとか考えずに、悠里ちゃんは自分の気持ちに正直になってね。
それで健を選ぶなら俺は二人を見守って……いけるか分かんないけど、悠里ちゃんが幸せになれる道を応援するから。
俺が言いたい事はこれで全部かな。
いろいろ話して自分でもよく分かんないや~
上手く伝わってるといいけど…」
ーーーちゃんと伝わってます、長田さんの気持ち。
「ありがとうございます…」
今の私にはこれしか言えない。
これ以下も、これ以上もないと思った。
ーーー長田さんの気持ちは嬉しいけど、その前にたけちゃんの事考えなきゃ。
今どこにいるのか分からない健を想って、私はそっと瞳を閉じた。