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キセイジジツ
第9章 思惑
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「あの…長田さん。
健兄ちゃんは無事でしょうか…あのマナって人にもっと酷い事をされてないでしょうか…」
ずっと気になっていた事を口にした。
ここにいる長田さんが健の安否など知るはずないとは分かっていても、聞かずにはいられなかった。
「せめて…あの場所がどこなのか分かればいいんですけど……」
ため息混じりの声を出すと長田が頭をポンポンと触った。
「健の事は心配ないよ。
実は居場所も特定して、もう保護済みだから」
「えぇっ!?」
予想外の言葉に私は目を丸くした。
「ごめんね、すぐに教えなくて。
ほら、築地っているでしょ。あいつに健を見つけてもらったんだ」
「ど、どうやってですか?!」
「んー…それは秘密。
でも健は築地がついてるから大丈夫だよ」
「良かった…」
「良かった、でもないかな。
健の体は無事だけど、心は…悠里ちゃんに動画を見られた事がかなりショックだろうから。
だからすぐには会えないかも」
「そんなの…健兄ちゃんのせいじゃ…」
「そうなんだけどね。
でももし逆の立場だとしたら…悠里ちゃんは健にすぐ会いたいと思うかな?
…思わないよね」
ーーー確かにそうだ。そんな事があったら…
会いたいと思っても、どんな顔をして会ったらいいのか分からないかも…
「嘘をついても意味ないし健の為に言うけどね。
健はマナに媚薬というものを飲まされてたみたいで…それは飲んだ本人の意思とは関係なく、体に異常な症状を招く薬なんだ。
…簡単に言うと、体がすごく敏感になってムラムラして、どうしようもなくセックスがしたくなる感じね」
「あ……」
長田の口から急に`セックス`という単語が出てきて私は動揺してしまった。
「築地が見つけた時には症状はだいぶ落ち着いてたみたいだけど、種類によっては長時間作用するものもあるみたいだし…
今会いに行っても話どころじゃないよ。
むしろ悠里ちゃんの意思関係なく健に襲われるだろうね。
それを含めて動画に映ってた健は、9割は本来の健じゃないって事だから信じてあげてね」
「はい…」
長田の口から出る言葉達が私の思考の天井を突き破っていく。
あの表情…マナの腰を掴んでた手…腰の動き…
健は悪くないと心から思えるだろうか。
本人を目の前にしてーー
私は気にしてないよ、と嘘でも笑えるだろうか。
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