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キセイジジツ
第10章 迷心
健と最後に会ってから一週間が経った。
何度も電話をかけようとしたけれどどうしてもかけられなくて、
逆に健からも連絡がなかった事で余計に連絡をしにくい状況になっていた。
ーーーたけちゃん何してるかな…。
意外とマメに連絡をくれる長田は連絡頻度からは想像がつかないほど多忙な毎日を過ごしているようで、電話の途中で寝落ちする事がほとんどだった。
健から私達の状況を聞いて、言葉にはせずとも気にしてくれているのかもしれない。
だから何となく長田に健の様子を尋ねるのは気が引けて、ここ一週間は落ち着かない日々を過ごした。
そんな日々を打破してくれたのは悠真。
行動を起こさない私にいい加減焦れったさを感じたのか私の携帯を扱って健に発信したのだ。
長い間鳴り続ける呼び出し音…
そろそろ留守番電話に切り替わるかなと思っているとそれは意外にも主へと繋がる。
「…もしもし?」
久しぶりに耳にする健の声に戸惑っている私に悠真が『早く』と口パクで催促する。
「……たけちゃん…久しぶり」
「久しぶり…悠里。元気にしてる?」
ーーーたけちゃんの声。口調は普段通り。
「元気だよ。……ねぇ、たけちゃん。いつでもいいから…少し会えないかな…」
しばしの沈黙ーー
「……うん、会おうか。…今からはどう?」
「1時間後なら大丈夫だよ」
「分かった、迎え行く。じゃあとで…」
電話が切れてからも、本当に会ってもらえるのか…それだけが不安だった。
約束の時間が近づき祖母宅の前で待っていると白のSUV車がやってきた。
ーーー良かった、来てくれた。
ホッとしながら車に乗り込むと健が軽く微笑んだ。
「お待たせ。行こうか」
「うん…」
口調は普段通りだけど表情がやはり固い。
「ゆっくり話したいから…」
そう言われて連れて来られたのは健の部屋。
ついこの前ここにいたのが遠い日のように感じて胸が傷んだ。
先に部屋に入って待っていると、お盆を抱えた健が戻ってきた。
「コーヒー切らしてて紅茶になったけど…平気?」
「うん、紅茶も好き」
私が即答するのを見て健は久しぶりの笑顔を見せてくれた。
ーーー笑ってくれたぁ……
「あのね、たけちゃん…」
「悠里、待って。俺から…悠里に話しておきたい事があるんだ。迷ったけど…話す。本当の俺についてさ…」