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キセイジジツ
第10章 迷心

すっかりベットから身を起こした悠真が肩を強く掴んでくる。

「何でだよ?そこまで健兄ちゃんの事好きなの?!」

「ゆーま、肩痛い…」
「あっ…ごめん」

力を緩めたけどその手はまだ肩の上。

「好きか嫌いか、って聞かれたら好きだよ」
「何それ。ゆーり、ドMなの?」

悠真の顔は至って真面目だ。

「何言ってんの。そういう事じゃなくて…
今回の事はそりゃあ許せないよ?
…あんなの強姦といっしょだし。
それでも、今までの優しいたけちゃんも知ってるから…すぐに嫌いになんてなれない」

ーーーずっと見てきたもん。
それが"従兄弟としてのたけちゃん"でも…


「そんなの自己満だよ」

「うん、そうかも。…もしたけちゃんが赤の他人なら私だってすぐ関係を切ったかも。
でもたけちゃんは従兄弟だから、今回の事で私がたけちゃんを嫌いになって関係を切ってしまったら、悲しむ人の方が多いと思うの。
もちろん、ゆーまもその中の一人だよ」

悠真が私から目を背ける。

「だからって…ゆーりが我慢するのはおかしい!」

少し声が震えている。

「うーん…我慢とは少し違うような…
誰かに強制されてやる事が我慢とかになるでしょ?
それなら私は強制されてないから大丈夫だよ」

「もう二人きりでは会わせない」

「そうだね。その時はゆーまがいっしょにいて。
たけちゃんと二人きりになるのは……怖い……」

次は私が体を震わせる番だった。

「ゆーり…」

「おかしいな…今はゆーまといるから安心なのに」

「そんな簡単に割り切れねーよ」

悠真が抱きしめてくれる。

私と同じ柔軟剤の香りがする。


「俺達はさ、自分で思うよりもガキなんだよ」

「うん、そうだね」

「無理に大人になろうとしなくていーよ。
どんなゆーりでも俺がそばにいるから、いっしょに大人になっていこ…」


ーーーねえ、ゆーま。気づいてないの?
双子でもゆーまは私の数倍、大人に近づいてるよ。


いつの間にか私を越していた身長も
そっくりだと言われ続けてきた顔と声も
ふにゃふにゃだったはずの体も
すべてがもう子供ではない。


ーーー無駄に筋肉なんかつけちゃって。
もうゆーまにも力じゃ勝てないんだろうな…
何か…寂しいなあ。でも…


「ありがとう、ゆーま」

これからもいっしょに大人になっていこうね。
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