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キセイジジツ
第10章 迷心
「はー……」
元は深い溜め息を吐いた。
腕を組んで見下ろすのは正座をした男二人の姿。
ーーーーーーー
事の始まりは悠真からの電話だった。
「悠里と連絡が取れないんだ!」
焦ってる様子の悠真は大声で訴えた。
普段なら多少連絡が取れないとしても気にしないだろう。
だけど今回は健の事があって、事情を知る周りの人間は何となくピリピリしていた。
そんな中で「悠里は健に会いに行った」などと聞いたら誰でも心配するに決まっている。
悠里は無事だろうかと。
悠真によると長田や築地にも連絡済みで、悠里と健が行きそうな場所を探してもらっているけどまだ見つけられず、あとは健の家だけとの事。
しかし、いくらチャイムを鳴らしても応答はなく家にはいないのかと思ったが、居留守を使ってる可能性もあるという事で所在を確かめる為、元に連絡を寄越したのだ。
元は仕事の為に外出中だったが車を飛ばして帰宅すると、自宅前に佇む男達を尻目にすぐに自室へ向かった。
「元兄ちゃん?!」
「黙ってついてこい」
自室に入るとすぐ施錠された引き出しを開き、一つの鍵を持って健の部屋へ向かう。
元は緊急時の為に各部屋のスペアキーを作っておいたのだ。
悠真は元の弟じゃなくて良かったと心から思った。
そして元が健の部屋のドアノブをひねると当然鍵がかかっていて、同時に部屋にいる事が分かった。
そっと鍵穴へ差し込み鍵を開けてドアを開けると、心配していた現実を目の当たりにした。
悠里と健が体を交わらせていたのだ。
「ゆーりっ!!」と悠真。
「たけっ?!」と元。
「悠里ちゃんっ!!」と長田。
健の動きは止まるが悠里を強く抱きしめた。
悠里は虚ろな目に涙を溜めてドアへ顔を向けるも、よく見えてないようで
ゆっくり目を閉じるとガクンと頭が健の肩に落ちた。
その瞬間、悠真と元が二人に駆け寄り、悠真は悠里を健から奪って抱きしめ、元は健を押さえつけた。
長田は近くにあったタオルケットを取り悠里の肩にかけてあげている。
「悠真。俺の部屋に悠里を連れていけ」
悠真は無言のまま悠里を抱き上げて部屋を出ていく。
すると無言だった長田が健に殴りかかったのだ。
「おい!待てっ!」
元は肉体派ではないので力に自信はなかったが、何とか長田を健から引き離したのだった。