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キセイジジツ
第10章 迷心
「うそ……」
思わず自分の頬を触ってみると確かに熱くなっていて私は戸惑う。
「だって私、たけちゃんの事…」
「それはやっぱ好きって気持ちよりも"憧れ"が強かったんじゃない?」
「…憧れ?」
悠真は手を動かしながら淡々としている。
「健兄ちゃんの事、俺も格好いいと思うよ。真人兄も格好いいけどあの人は変わってるから別として。
健兄ちゃんはどこから見てもイケメンだし優しいし、たまにしか会えない悠里が好きって思うのも無理ないよ。でもさ、それって健兄ちゃんの事何も知らないのといっしょで、良いイメージだけで好きって思い込んでるんだよ」
「そんな…」
「マナだっけ?あの人からハメられた事で健兄ちゃんの過去が分かった時、悠里どう思った?
こんなの健兄ちゃんじゃない!って思ったんじゃない?」
「あ…」
確かにそう思った私は何も言えない。
「でも健兄ちゃんからしたらその過去を含めて自分なんだよ。どんなに黒い過去でも消せないしね。
だから悠里が本当に健兄ちゃんの事が好きなら、過去を含めて健兄ちゃんとして許して、認めて、支えていくしかないんだよ。
…悠里にそれが出来る?」
私はゆっくり首を横に振る。
「でも悠里の気持ちも嘘ではなかったんだから無理になくそうとしなくていいよ。ただ感じ方を間違ってただけで、確かに健兄ちゃんへの想いなんだし。
悠里がそこで壁を作ったら健兄ちゃんも寂しいと思うし、次会った時に話してみよ?」
「うん」
「これで健兄ちゃんへの気持ちには区切りがつけるよ。で、恭介さんの事だけど…」
「いい!言わないで!」
「へ?」
悠真が首をかしげて私を見る。
「長田さんの事…自分がどう思ってるのかちゃんと自分で気づきたいから…悠真は何も言わないで。
誰かに言われて気づく気持ちって何か違う気がする」
「うん、そーだね」
それからお互い黙っていた。
悠真はちゃんとキレイに髪を整えてくれた。
「はい、終わり。先に行ってるね」
そう言うと居間へと向かった。
頭の中でいろいろと整理をした。
ーーー私の事を一番理解している悠真がああ言うなら、そばで見てきた上で言うなら、私の気持ちはやっぱり恋とは違うんだろうな…
すごいな…悠真。私より私の事を解ってる。
悠真と双子で…お姉ちゃんで良かった。
ふふっと笑いながら頬を叩いて気合いを入れた。