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キセイジジツ
第11章 外出
長田がお見舞いに祖母宅を訪れてくれた日から三日が経ち、私はすっかり元気になっていた。
手土産の通りもんを食べていると長田が
「元気になったら何食べたい?」
と尋ねてきたので、可愛い子ぶってパスタとか言おうと口を開くと
「悠里はお肉食べたいんだって」
とお茶を煎れて戻ってきた悠真が余計な事を言った事で、長田が連れてってあげるよと強引に約束を決めたのだった。
「本当にしゃぶしゃぶでいいの?」
車を運転しつつ前を向いたまま長田は声を出した。
長田の車に乗るのも、二人きりになるのも久しぶりな私は少しドギマギしている。
「しゃぶしゃぶの方がアッサリして食べやすいかなって思って」
元気になったものの、何となく焼肉は体に悪いような気がして、同じ肉なら柔らかくて摂取する油も少なくて済む、しゃぶしゃぶの方がいいと思ったのだ。
「確かにね。じゃ焼肉はまた今度ね」
「…いいんですか?」
「うん。俺も食べたいし」
他愛ない話をしているとあっという間に店に到着した。
「お腹すいたね」
長田の言葉にうなずきながら店に入るとファミレスのようなソファー席に案内され、長田がメニューを開く。
「スープが二つ選べるよ。どれがいい?」
「うーん。オリジナルとチゲのがいいです」
「おっ、いいチョイス」
ニコッと笑って店員を呼び注文を伝えると、長田は私をジッと見つめてきた。
「ど、うしました?」
「んー悠里ちゃんだなあと思って」
「へ?」
「いや、こんな風にいっしょに食事できるなんてなあと思って」
そう言われてみればそうだ。
まだ私達はまともに食事も行った事がない。
今日が初めての外出であり、食事という名のデートなのだ。
長田は相変わらず長い髪を後ろで一つに結って、シャツにジーンズというラフな格好をしていて、実年齢より少し若く見える。
ーーーカチッとした格好も似合うけど、こういうのも似合ってるなあ。
私がお冷やを手にすると、長田もお冷やを口に含んで喉を鳴らし、わずかに目を伏せて口を開く。
「健とは…いつ会うの?」
お冷やの氷がカランッと音を立てる。
グラスを握ると長田の視線が私を捉えた。
「俺はね、健の事許したいと思ってる」
「え…」
予想してなかった言葉。
「どんな結果になっても」
長田の顔や声は穏やかだった。