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キセイジジツ
第11章 外出
健が何を言ってるのか理解出来なかった。
ーーー警察に行く?罪を償う?
確かにたけちゃんのした事はショックだったけど…私はそこまでを望んでないのに。
「父さんや母さん、おばちゃんやおじちゃん、親族には俺からきちんと説明して謝罪するから、悠里は何も心配しなくていいよ」
「まっ…て…」
「悠里は何も悪くないんだから自分を責めないで欲しい。悠里の周りにはたくさんの人がいるから、俺一人くらいいなくても大丈夫だよ」
「ちょっと待ってよ!!」
勝手に話を進める健を止める為に私は大声を出して椅子から立ち上がった。
その勢いに健と築地は目を丸くし、悠真が私の服を引っ張る。
「悠里…?」
キッと悠真に鋭い眼差しを向ける。
「悠真は黙ってて!」
「はい…」
ーーーやべ…悠里がキレてる…
悠真は服を引っ張っていた手をそっと引いた。
「たけちゃん!勘違いしないで!」
「え…」
「私がいつ自首みたいなことしてって言った?」
「いや…言ってないけど…」
「だよね!別に私はそこまでして欲しいと思ってないし、それこそたけちゃんの自己満でしょ!」
健は何も言えずに黙っている。
「法的に罪を償う?そんなの私から離れる口実じゃん!償う気があるならそばにいて、その姿を私に見せてよ!まさか、それは出来ないって事?!」
「そういう訳じゃ…」
「ないって事ね。今のちゃんと聞いたよ。悠真と築地さんが証人だからもう撤回できないよーだっ!べぇー!」
ーーーべぇーって舌出して…小学生かよ。はぁ…
悠真はため息を吐いている。
「でもさ…」
「でもとかうるさい!さっきたけちゃん私が決めていいって言ったよね。それなら決める。警察なんか行かなくていい!」
健もおでこに手をあてて頭を垂れさせた。
「法的に言うなら被害者の私がいいって言ってんだから警察に言っても無意味だよ。刑務所へ逃げるなんて許さない。これからも私の従兄弟の健兄ちゃんとしてそばにいてよ!」
「ゆっ…」
角度的に見えないけれど詰まったような声の響きで健は泣いてるのだと分かった。
「みんな、たけちゃんの事好きなんだよ。たけちゃんのした事は消える訳じゃないし忘れられないかもしれないけど、たけちゃんは一人だけだし、他の人じゃダメだと思う。
ずっとここにいて欲しいよ」
健の鼻をすする音だけが耳に届いていた。