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キセイジジツ
第11章 外出
夏休みだというのに男の子は学生服姿で、すぐに高校生だと気づいた。
顔や腕まくりによってさらけ出された腕はほどよく日焼けしていて、何か運動部に入ってるのかなと考えていると男の子が口を開いた。
「誰?」
襖に手をかけたまま動きを止めた男の子は目を見開いて私を凝視している。
いつもの教室に突然見知らぬ人物がいればその反応になるのはあたり前だろう。
「あ…初めまして。私佐田です。今日は長田先生のお手伝いとして来ています」
丁寧に頭を下げて挨拶をすると男の子は訝しげな顔をしながらも教室へ足を進め、私の目の前まで近寄ってきた。
切れ長の目が私を品定めるように上下に動く。
「ふーん。恭介さんの女なの?」
「えっ」
「違うの?」
「いや…そんな感じでは…」
ーーーまだ付き合ってる訳じゃないし。
初対面だというのに、深い質問をぶっ込んでくるなあと思いながらも、私は正直に答える。
年齢は同じくらいだろうか。
顔を見上げる体勢となるので、おそらく身長は長田と同じくらい。
金髪の派手な髪と耳についているピアスの数が男の子の人間性を表しているようで少し怯む。
私の薄っぺらいボキャブラリーで表現するなら、これしかない。
ーーーヤンキーなのかな?
ドキドキしながら男の子を見つめていると、おもむろに自己紹介をしてくれる。
「ふーん…まあいいや。俺大和(やまと)」
「大和くん?名字ですか?」
「下が大和。上は高砂(たかさご)そっちは?」
「あ、私は佐田悠里です」
「悠里ね。よろしく」
「よろしくお願いします」
ーーー話してみると割と普通?
少し馴れ馴れしい感はあるけど……
あ。さっき遅刻しましたーって言ってたから生徒さんだよね。
とりあえず座ってもらおうと空いてる机を探して教室を見渡す。
「高砂くんは…どこに座ります?」
「大和」
「え?」
「呼び方、大和でいいよ」
「で、でも…」
「悠里は何歳?」
ーーー何気に下の名前で呼んでるし。
「16ですけど…」
「やっぱタメじゃん。敬語もやめなよ」
「高砂くんタメなんだ…」
「ほら、また。やーまーと!」
「や…大和くん」
「そうそう。いい感じ」
ーーー何か私、流されてる?!
そう気づいた時には遅く、大和の隣に座らされて、付きっきりで指導をさせられていた。