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キセイジジツ
第12章 作戦
大和の事を苦手だと感じたのは本心だった。
でも普段の自分なら苦手なくらいで時間をずらしたりなんて小細工みたいな事はしない。
それならなぜ長田に申し出たのか。
答えは簡単だ。長田に誤解されたくないと思ったから。
大和は初対面だと言うのに慣れた態度で私の腰に手を回してきた。
本当に高校生なの?と思ったが、それ以上に不躾に触られるのに抵抗があったのだ。
でも静かな教室内で大声を出す訳にもいかず、まるで電車内で痴漢されて声が出せなくなるような感覚を味わった。
そして良いタイミングで戻ってきた長田によって助けられて心底、安心する。
ーーー長田さん……
目の前にいる長田は私に簡単に触れたりしないし言動や雰囲気から人柄の良さが見てとれる。
ーーー初めて会った時は無愛想な人だなーって思ったけどね。
よくよく聞けば、あの時はたまたまコンタクトも眼鏡も手元になく私の顔も8割ほどしか認識出来なかったとか。
そして最近そばにいて気づいたのは、裸眼で見えにくい時は目を細めるようにするという事。
事情を知らない人間が長田のその顔を見れば、無愛想か目付きの悪い人という印象を抱くだろう。
今となっては長田のその目を細める仕草が可愛く感じるようにまでなっている。
本人には言えないけれど。
ーーー私…長田さんの事好きなのかな…
ずっと健の事が好きだったのにそれは恋心とは違うと気づいてから、何をもって"好き"という事なのか分からなくなっていた。
悠真に相談しようと思ったがここ何日間か悠真は健や築地と遊びに行ってるみたいで、ゆっくりと話せる時間がなかった。
ーーーやっぱ女心は…女の子じゃなきゃダメか。
親友の顔を思い浮かべていると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろ」
椅子から立ち上がり「はーい」と言いながら玄関へ向かう長田のあとをコッソリ追う。
覗き穴に目を近づけて外を確認すると笑って扉を開けた。
「お荷物で~す!」
玄関先にいたのは私も知ってる顔。
「保さん、こんにちは」
「保兄ちゃん?!」
大きな段ボールを抱えて立ってるのは確かに従兄弟の保で、宅急便の仕事をしてるとは聞いていたけど、いざこうやって荷物を届けてもらうと驚くものだ。
保と会うのは久しぶりだなあと思いながら二人へと近づいた。