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キセイジジツ
第12章 作戦
「ダメでした?」
私が尋ねると「うん」と眉を下げて笑う。
「淳と遊んでるから行けないって。淳に代わってもらったら悠里ちゃんと俺の邪魔は出来ないってさ…」
「あ…」
「思った以上に気を遣わせてるっぽい」
「そうですね…」
二人でシュン…としてしまう。
悠真がここのところ私のそばにいなかった理由に気づいて申し訳なさを感じた。
きっと悠真なりに長田にも、健や築地にも気を遣っているのかもしれない。
「でも…せっかくだから甘えよう」
「はい」
悠真に感謝しながら私と長田は視線を交わした。
ーーーーーーー
夕方になるまでの間、時間に余裕が出来たので二人で長田家の掃除をした。
提案したのは私で、あんな高級肉をタダでいただくのに気が引けたから何かしようと思ったのだ。
そこで目をつけたのはこの家全体。
こまめに掃除はしているみたいだが、普段ほとんど使わない部屋に関しては手をつけられてないというのが現状だった。
「いや~恥ずかしながら自分が使うとこさえキレイなら良いかなって思ってさ」
頭をポリポリ掻きながら長田は愛想笑いをした。
「それに…この家ホント広くて全部掃除しようなんて思うほど掃除好きじゃないし…」
ーーー確かに。毎日は辛いかも。
「特に見られて困る部屋はないからさ。これ道具一式ね。よろしくお願いします…」
「任せてください」
そんな訳で黙々と掃除を続けている。
浴室やお手洗いなど水回りは長田が担当し、私は各部屋の担当となり、残るのは長田のご両親の部屋のみ。
すぐ目に入ったのは大きな箪笥(たんす)と鏡台。
それらには埃から守る為に布が掛けられている。
部屋全体を上からはたいていき、箒で埃を集め、畳を水拭きをしていると仏壇に目が留まる。
立派な仏壇にはお供え物が置いてあるが故人の写真は飾られてない。
不思議に思いながらも水拭きを終わらせると襖が開かれ長田が入ってきた。
「悠里ちゃんどう?もう終わりそう?」
「ちょうど終わりました」
掃除道具を片付けながら疑問を長田へぶつけた。
「あの、仏壇なんですけど、写真は飾らないんですか?」
「え?飾ってるよ」
「えっ?なかったですけど…」
「…あっ忘れてた。写真を入れ替える時に額を落として壊してそのままだった……ちょっと待ってて!」
長田が急に走り出していた。