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キセイジジツ
第12章 作戦
「何この肉!ちょーうめえー!!」
大和は焼けた肉を口に運び歓喜の声を上げると、白米を勢いよくかきこんでいた。
私はその勢いに呑まれてボーッと大和の食べっぷりを見ていた。
ーーーすごい食べるなあ。
「大和。肉は逃げないからゆっくり食べな」
「らって、ほんなひく、はへたほほなひし」
「何言ってるか分かんねーよ。ははっ」
長田はホットプレートに肉を並べていきながら笑っている。
そんな長田に視線を移して見つめていると、視線に気づいたのか「ん?」と首をかしげた。
慌てて視線を逸らして肉をほおばると今まで口にしたどんな肉よりも美味しかった。
「お…美味しい…!」
「ん。どんどん食べてね」
そう言って焼けた肉を大和と私の皿に次々のせてくれるが、長田はまだ一口も食べていない。
「長田さん…まだ食べてないですよね。焼くの代わりますよ」
長田が持つトングを取ろうと手を伸ばすと、長田はその手を引っ込めてしまい、私はトングを取る事が出来なかった。
「えっ…」
「俺の事はいいから、悠里ちゃんも食べなさい」
「でも…」
「遠慮しなくていいくらい肉はあるからさ」
そう言われて私は肉を口にしていく。
チラチラと長田の動きを観察していると、大和と私の皿に肉をのせたあと、自分の皿にものせてそれを口にしていた。
「おお…まじで旨いな…」
その瞬間、目が輝いて、大人びた長田を少し子供っぽくした。
そんな小さな事だけど知らない一面を見れた気がして嬉しくなった。
「はあ~まじうますぎ。ここに来て良かった~」
しばらく黙って食べていた大和が満足げに声を出す。
その口元にはご飯粒がついていた。
「あ、大和くん。口のとこご飯粒ついてる」
「どこどこ?…悠里ちゃん取ってよ」
「えっ…いやあ…」
ーーーまさかそんな返しがくるとは…
何も考えずに指摘した事を後悔した。
とその時、長田の手が大和へと伸びて口元のご飯粒を摘まみ取る。
「ほ~ら、取・れ・た。口につけるなんてまだまだ子供だなあ~」
にこやかに笑ってはいるが、口調がどこか皮肉っぽさを含んでいる。
そんな長田に対して、大和は聞こえるように舌打ちをした。
ーーーえぇー…今舌打ちしたよね?!
「恭介さんは、すげー大人げないよねえ~」
敵意を感じる目付きで睨み合う二人を私はハラハラしながら見つめていた。