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キセイジジツ
第12章 作戦
「おい、こら。サカりすぎ」
長田が大和の後ろ首の服を掴み、軽々と大和を私から引き離す。
「うぐっ!」
大和が苦しそうな声を出して床に落とされる。
「ゲホッ…ゲホッ……」
そんな大和を冷たい目で一瞥すると、私には眉を下げて心配そうに顔を覗き込んできた。
「悠里ちゃん、大丈夫?」
恐怖と、助かった安心感とで首を横に振りながら長田に抱きつくと、頭と背中を優しく撫でてくれる。
「うん、怖かったね。これくらいの歳の男は狼だからね…あとでうんと叱っとくから。…とりあえず、俺の部屋に行こっか?」
私は声を出せずにコクンとうなずく。
「大和、お前はここにいろよ。つーか、食器でも洗っとけ」
「分かった…」
やけに素直な返事だったが、私は大和を見る事なく長田にくっついたまま居間を出た。
「着いたよ。……えっと……悠里ちゃん?」
長田の部屋に着いても離れようとしない私に長田は困ったような声を出した。
「もう怖くないよ。ベットに座ろ?」
私がうなずいたのを確認して、ベットへと座らせてくれる。
それでも私は長田の胸板に顔を埋めて離れなかった。
「ほら、もう家に送るから…」
その言葉にも首を振る私に長田はついに動きを止める。
「もしかして……帰りたくない?」
「…うん」
長田が息をのむのが分かった。
「泊まってもいいけど…大和も泊まるんだよ?」
「それでも……」
「泊まりたいって事?」
「はい…」
「うーん…」とうなる声がするけど、今は長田から離れたくなかった。
顔を上げて長田の目を見つめて訴えかけると「ずるいなあ…」とため息を吐いた。
「分かった。じゃ今日は俺のベット使っていいから、この部屋でいっしょに寝よう。唯一この部屋だけは内側からも鍵かけれるから、大和が勝手に入ってくる事もないし…それで良い?」
「うん」
やっと体を離して納得した私を見て長田は頭をワシャワシャと乱暴に撫でた。
「長田…さん?」
「大人しく待っててね。後片付けとか大和に部屋を用意したりしてくるから。一応、鍵かけとくね」
「分かりました…」
長田の後ろ姿を見送って私はベットに横になる。
ベットからは石鹸の匂いがした。
ーーー長田さんの匂いといっしょ…。
枕に頭を預けて目を閉じると、長田がそばにいるようでとても安心出来た。