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キセイジジツ
第13章 確信
それ以上何も話そうとしない私に長田は「分かった…」と言って渋々ながらも何も聞かないでくれた。
しばらくすると祖母の家に到着して「また連絡するね」と頭を撫でてくれながら笑い、私が玄関のドアを開くのを見届けてから自宅へと帰っていった。
ーーーはあ…。聞くにしてもどう聞けばいいのやら…。
こんな時、自分の恋愛経験のなさがどうしようもなく嫌になる。
ーーーそりゃ…長田さんだって大人だし、そういう事の一つや二つ、いや確実にそれ以上経験してるんだろうけどさ…。やっぱ複雑な訳で……。
居間に向かう気にならず、靴を脱いで自分の部屋に向かう。
ーーーおばあちゃんに心配かけたくないし…。
荷物を投げ捨てベットに横になると柔軟剤の香りがして、ふっと長田のベットの香りを思い出す。
ーーーいい匂いだった。長田さんの匂い…。あのベットで……誰かと……っ。
ガバッと起き上がり頭を振ってマイナスな想像を飛ばす。
ーーーダメだ、キリがない。
ため息を吐いていると鞄の中で携帯が震えているのに気づいた。
画面を見ると今一番会いたい人の名前。
「りっちゃあぁーんっ!」
情けない声でそう呼びかけると電話の向こうの律が「えっ」と戸惑った声を出す。
「…悠里?何、どしたの」
「それが…いろいろとあって…。ほんっとうに、いろいろあって……」
「あー…昨日真人さんに偶然会って、何となくは聞いたよ」
「え、真人兄ちゃん?どこまで聞いた?」
「えっと、悠里の夢?の男の子が実は健さんの友達だったって。…本当なの?」
「うん…」
「そっか。真人さんが嘘つく必要ないもんね。…で、それが分かって悠里はどうしたの?」
「うん、私なりにいろいろ考えてね……」
律には直接会って話そうと思ってた。
健兄ちゃんにちゃんと告白したよ!って、照れるけど、頑張ったよって話すつもりだった。
でもそれはもう終わった事で、頑張った事には変わりはないのだけど気持ちが重かった。
突然現れた夢の男の子だった"恭介さん"は私をずっと探してくれていて、私に会いたかったと言ってくれた事が今の私には大きくて。
彼の気持ちは分かってたけど、自分の気持ちがハッキリ分からないまま体を重ねた事、それが新たな悩みの種となった事
こちらに来て起こった事すべてを私は隠す事なく吐き出した。