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キセイジジツ
第13章 確信

「で、恭介さん?長田さん?に触られるのは嫌じゃなかったから体を許した訳だよね」

「りっちゃん…体を許したとかそんな言い方しないでよ…」

「だって本当の事だし。てか、名前と名字どっちで呼べばいいの?…そもそも何で嫌じゃないって思ったわけ?」

「紛らわしかったね、ごめんごめん。じゃ長田さんで。うーん、何て言ったらいいのかな…。
長田さんは優しくて…ただ優しいんじゃなくて…思いやりが詰まってる優しさなんだよね。さっきチラッと話した大和くんに対しても面倒見がいいし、私の好きなチョコレートケーキとかハンバーグとか用意してくれたし…」

「…食べ物に釣られてるし」

「はは…。それにね、視野が広い人かな」

「視野?」

「うん。これは私が勝手に思ってる事なんだけど、周りをよく見てる感じ。自分の事よりも周りを優先させちゃうような…例えるなら保兄ちゃんみたいな…」

「えっ!長田さん、あのワンコ兄に似てるの?!」

「りっちゃん…」

「ごめん、話の腰折って。長田さんってお人好しなの?」

「保兄ちゃんって言ったけど、あそこまでないかなあ…。厳しい時は厳しいし、メリハリがある感じ」

「えー…全くイメージ湧かないんだけど」

「とにかく、長田さんは普段は落ち着いてて大人っぽくて頼りになるの。それに書道の先生で、憧れの"恭心さん"だったし!」

「いやそれが一番理由になんないけど」

「私には十分な理由なの!…でも長田さん、たまに寂しそうな顔するんだよね」

「寂しそう?」

「ご両親もいなくて広い家に一人暮らしだし寂しいんだろうなって思うけど、長田さんはそんな素振り見せなくて…。無理してるのかなあ…」

「そりゃ寂しいし無理してるよ。一人が寂しくないって人の方が稀でしょ」

「だよねえ…。私、長田さんに何がしてあげられるかなあ…」

「何かしてあげたいと思うの?」

「え、うん」

「今は何もしなくていいよ。でも長田さんがそういう弱みを見せてきた時に、そばにいてあげたらいいと思う」

「…それだけ?」

「うん、それだけ。長田さんが何も言わないのに余計な事をするのはただのお節介。ウザいだけ」

「ウ、ウザ…」

「それに身の丈に合わない事すると悠里が疲れるだけだよ。悠里はそのままでいいんだって」

「うーん…」

「持ちつ持たれつの関係じゃないと上手くいかないよ?」

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