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キセイジジツ
第2章 再会

健兄ちゃんとキスをした。

恥ずかしいけど嬉しくて温かくて、健兄ちゃんに近付けた気がした。

なのに唇が離れた後、健兄ちゃんは泣きそうな顔で私に謝った。


ーーーどうして?


キスした事を謝ったの?
私の事、好きじゃないの?
好きじゃないけど、キスしたって事?


キスは好きな人だけとするものだと思っている私は頭が混乱して、それ以上何も考えられなかった。



健兄ちゃんに手を引かれて家の中に入る。
ただうつむいて、ついていく。

男の人達の笑い声が聞こえてきた。


秦家は人がよく集まる。
広くて両親がほどよく放任主義なので、よほど悪さをしなければ何をしてもいいのだ。

だから夏休みや年末年始に秦家に遊びに来ると知らない人と鉢合わせる事もよくある事で、
私は従兄弟達の友達に顔を覚えられていた。


リビングに入るとみんながこちらを向き、
見覚えのあるお兄さん達が健兄ちゃんに手招きする。

「お、たけ~」
「酒あるぞー」

健兄ちゃんがチラッと私を見る。

「俺、あっちいってくるね」
「うん」

手を振って見送りキッチンへ向かう。


冷蔵庫を覗いてジュースを探していると足音が聞こえて背後に気配を感じた。

「何探してんの?」

冷蔵庫を一度閉めて、そろーっとその人へ顔を向ける。
見た事がない人だった。

「飲みもん?」

「あ、そうです。ジュースを…」
「酒じゃなくて?」

「えっと、未成年なので…」

「は?」
「え?」

お互いに首をかしげる。


また足音が近付いてきた。

私の前には首をかしげて黙ったままの'その人'がいて、誰が来たのか見えない。

「恭介、何してんの?」
ヒョイッと現れたのはよく知っている人。

「あれ、悠里もいるし」
「元兄ちゃん…」

元兄ちゃんの顔を見た途端、気が抜けたようにその場に座り込んでしまった。

「悠里っ!?」
焦った顔の元兄ちゃんの顔が近付く。

「どーした、気分悪い?」
「ううん、違うの…」

様子のおかしい私を見て何かあったと瞬時に感じ取った元兄ちゃんはスッと立ち上がる。

「ここで待ってろ」
そしてキッチンから出て行ってしまった。


急に静まる空間。
そっとため息をつく。


「キミ、大丈夫?」

遠慮がちに'恭介'と呼ばれた人が声をかけてきた。
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