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キセイジジツ
第14章 訪問
入浴を済ませて部屋に戻ると長田からメールが届いていた。
【少し話したいな】
受信されたのが30分くらい前で、まだ起きてるかな?と思いながら発信させると数回コール音がして繋がった。
「悠里ちゃん、良かった。もう寝てるかと思ったよ」
「お風呂入ってました~」
「そっか。あ、一度切ってかけ直すよ。待ってて」
そう言うと本当に切って、かけ直してくれる。
「お待たせ」
「そこまで気を遣わなくて大丈夫ですよ?」
「いーの。俺がしたくてしてるんだし。…あのさ、明後日会える?」
「明後日…」
明後日は家に帰る日だからドキッとした。
「都合悪い?」
「いや…あの、まだ言ってなかったんですけど…」
「な、に?」
私の固い声に長田の声も緊張した。
「明後日…家に帰る事になりました」
「え…」
「実は姉が今日こっちに来まして、明後日帰るからいっしょに帰ろうって事になって…」
「そうなんだ…」
しばしの沈黙。そしてーー
「長田さんさえ良ければ、明日も会いたい…です」
私なりの精一杯の言葉。
「俺も…会いたい」
断られる事はなかった。
ーーーーーーー
翌朝ーー午前6時
早起きしておめかしした私を見つけた祖母に「今日…泊まってくるね」と伝えると、「気をつけていってらっしゃい」とだけ言ってくれた。
その時、祖母は私がどこに行って誰と会うのか、気づいてるような気がした。
母は偉大と言うが、祖母も偉大だ。
玄関をそっと開けて外に出るとすでに黒のセダンがあって、明け方は冷えるのに長田はわざわざ外で待っててくれた。
「おはよ…」
まだ少し眠たそうな顔をして笑う長田を好きだと思った。
「おはようございます!待たせちゃいましたか?寒くないですか?」
慌てて駆け寄る私をギュッと抱きしめてくれる。
「ぜーんぜん。こうすれば温かいしね」
「ふふ…」
この気持ちが嘘じゃなくて良かった。
「時間が惜しいから行こうか」
「はい」
車へ乗り込むと長田が手を差し出す。
「今日はずっと手を繋いでいよう?」
「あ…はい」
「勝手に離したら罰ゲームね」
「えっ、罰ゲーム?!」
「内容はまだ内緒」
人差し指を唇につけて「シィー」と言う長田が可愛い。
「さ、ゲームスタート!」
車がゆっくりと出発した。