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キセイジジツ
第14章 訪問

最初に連れてこられたのは展示場だった。

「ここって、展示場ですか?」
「そうだよ」

意味ありげに微笑む長田に続いて行くと、入口の鍵を開いて「どうぞ」と私を先に入れてくれる。

受付カウンターを過ぎたところで長田が足を止める。

「実はね、今月末からここで俺の作品展をやるんだ」
「えっ!」
「ははっ、悠里ちゃんはそういう反応すると思った」
「作品展って…すごいです!!」
「うん、俺もすげー驚いてる。前から作品展やらないかって話はあったんだけど気が乗らなかったんだ。でも今回やりたいって思えたのは…悠里ちゃんのおかげだよ」
「…私の?」

長田はゆっくりとうなずき、私の顔を覗き込む。

「教室の先生だけで満足していた俺を悠里ちゃんが動かしてくれたんだよ」
「私、何も…」
「してない?いや、俺を、恭心でもあると思い出させてくれたでしょ」
「あれは、」
「たまたまかもしれないけど、嬉しかった。認めてくれる人がいるんだって心強く感じたよ」

私の手を引いて順路に添って歩き出す。

「だからね、いろんなとこに手を回して準備を進めてきたんだ。俺しばらく忙しかったでしょ。あれはこれの為でさ、本当なら初日に招待したかったんだけどそれは無理そうだから…。せめて悠里ちゃんが帰る前に見せたくて…」

ーーー確かに…忙しそうだった。この為だったなんて…。

「今回の作品展のテーマは"俺自身"なんだ。スポンサーからも書体やレイアウトを含めるすべてを自由にしていいって言われて、本当に自由にしてしまったよ。はははっ」

長田は本当に嬉しそうに笑っている。

「えー、記念すべき一人目のお客様には、もれなく恭心の解説がオプションとしてつけられますが、いかがなさいますか?」
「ぜ、ぜひお願いします!」
「ふふっ…喜んで」


最初の作品のところで足を止める。

作品名は『始まり』で
【恭範】と【英里】の行書。


「何て読むんですか?」
「〈やすのり〉と〈えり〉だよ」
「やすのりとえり…」
「父さんと母さんの名前なんだ」
「えっ…」
「父さんはそのままだけど、母さんはエリーって名前だから俺が勝手に漢字をあてたんだ。しかもイギリス出身だから英国が里…英里…えりでいいやっていう駄洒落なんだけどね」

「すごく…素敵です」

「ありがとう」

心が温まる『始まり』だった。
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