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キセイジジツ
第14章 訪問

次のエリアは『翔』


「ここはね、親しい人の名前にしたんだ」

翔太から順に、圭佑、耕司、貴博、春馬、祐輔と続き…悠真、真人の名もあった。

そして一際大きく、健と淳の名が並んでいた。
すべて行書。

「知らない名前もちらほら…」
「名前は知らなくても顔は知ってるはずだよ」
「え?」
「健んちによく来るメンバーだからさ」
「あ…!」
「そのうち覚えてやってね」
「はい!」
「いい返事。じゃ次のエリア行こう」

隣にいる長田は落ち着きを取り戻したようだが、繋がれた手のひらからは熱が伝わってきて私の手まで熱くなる。



次のエリアは『点』


「ここは、今まで関わった人の名前なんだ」

そこには数えきれないほどの名があり、これまでの人生を象徴するかのようで…

長田の人望の厚さを示していた。

「たくさんですね…」
「昔から出会いに恵まれてるというか…俺の周りには素晴らしい人ばっかなんだよね」
「それは……長田さんが素晴らしいからですよ」
「え…。そうかな?ははは…」
「冗談じゃないですよ。皆さん長田さんの本質というか良いとこをちゃんと見てくれてるんじゃないでしょうか。…私もその一人です」
「あ……ありがとう」
「い、いえ…」

大胆な事を言ってしまった気がして、長田が照れて笑うのを見て私も照れてしまった。

「それじゃ…次行こうか。次で…最後だよ」



最後のエリアは『決』


「ここは…見てもらえば分かるよ」

そう言われて足を進めると【永遠】の行書。

「これって……」

あの頃見たのといっしょだった。

「悠里ちゃん感動したって言ってくれたよね」
「はい…、永遠はあるのかもしれないって思わせてくれたから…」

パパと二人で見に行った書道展。

「今はどう思う?」

もちろんママはいなくて。

「…分からなくなりました」
「そっか…」

今パパとママはーー

「でも、やっぱり素敵です」
「良かった」

私が微笑むと長田はホッとしたようだった。


「…続きがあるんだよ。ほらあっち」

長田が指差した方に目を向けると【約束】の行書。

「俺が一番好きな言葉なんだ」
「約束がですか?」

私が首をかしげると長田は少しムスッとした気がした。

「…したから」
「え?」
「夏祭りで約束したから……」
「あ…」

私はあの時の約束を思い出していた。
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