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キセイジジツ
第14章 訪問
しばらく長田が抱きしめていてくれたのだが、そろそろ展示場を出ないといけない時間が迫っていたので涙を引っ込めた。
「作品を写真撮るのって…」
素晴らしい作品達をせっかくだから写真に残したいと考えつつ、控えめに尋ねる私に「そう言ってくれるかもと思って」と微笑みながら一冊の本のようなものを差し出してくる。
「用意してみました」
受け取ったのはすべての作品が掲載された作品集。
「大切にします…っ!」
まさか作品集まで用意してくれてるとは思わなくて嬉しすぎてギュッと胸に抱いた。
ーーーーーーー
それから遊園地に行くつもりだったのだが、車に乗り込んですぐ天気が崩れてしまった。
「うわー降ってきたな…」
小雨ならレインコートでしのげたかもしれないけれど、かなりの大雨なので仕方なく遊園地は諦める事にした。
昼食は遊園地内で済ませようと長田は考えていたようで、それが中止になったからジャンケンして負けた方が店を決める事になった。
そして負けたのはーー長田。
「……じゃ寿司食べたい。いい?」
私がうなずくと最近オープンされたばかりの回転寿司へと連れて行ってくれた。
まだ午前11時前だけあって営業が始まったばかりの店には他に客がちらほらとしかいない。
「たくさん食べてね」
テキパキと手拭きや箸を渡してくれながらお茶を注ぎ、小皿に醤油を出してくれる。
ーーーお母さんみたい…ふふっ。
「俺、貝汁頼むけど、どうする?」
「私も飲みたいです」
味噌に種類があったから、赤味噌一つと白味噌一つを頼んでシェアする事にした。
「貝汁うま~!」
「赤も白も美味しいですね~」
長田はマグロ・ウニ・イクラ・イカ・エビなど定番なネタを頼むと、ニコニコしながらどんどん食べ進めていく。
私も結構食べる方だけど長田には負ける。
男女で違うからとかじゃなくて、どこかのアスリートですか?と思うほど食べる量が多いのだ。
「この後どうする?どっか行きたいとこあれば連れてくよ」
「んー特には…。長田さんのお家で大丈夫です」
「え、ウチ?!まだ時間あるから室外じゃなければどこでもいいよ?」
「長田さんちがいいです。わがまま言うなら…DVDをいっしょに見たいです」
「…分かった。DVD借りて帰ろ」
お腹いっぱい食べ終えると店を出てレンタル店へ向かった。