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キセイジジツ
第15章 距離
一度気まずいと思ってしまうと、なかなかそのループからは抜けられなくて。
私はひたすら視線だけを動かしている。
「う~ん……」
あれから真悠子が東京から買ってきたお土産をお茶うけとしていただいているのだが、どうにも空気が悪い。
「やっぱ東京●ナナ、うんまい」
「だな、土産と言えばコレだな」
真悠子と旋を除いて。
「ちょっと旋、何であんたまでウチに来るのよ」
真悠子が隣に座っている旋をジロリと睨む。
「え?」
「りっちゃんはいいけど、あんたは帰りなさいよ」
「何でだよ」
「家族団らんの時間を邪魔しないで」
律は家族の一員というような口ぶりだ。
「それなら余計俺もいていいだろ」
「は?」
「律の兄貴だし、ゆくゆくはこの二人の兄貴に……」
「はあ?」
悠真と私を交互に指差す旋の指を、真悠子がペシッと叩き落とす。
「指をさ・す・な!んで変な事言わないでよ」
「変な事じゃないだろ。真悠子はいずれ俺の嫁さんになるんだし」
旋が衝撃発言をした。
ーーーえ、そこまで話進んでるの?!
真悠子を含めた全員が目を見開く。
真悠子の反応を見れば、すぐに旋の勝手な言葉だと分かるのだが。
「なっ!あんたが勝手に言ってるだけでしょうが!」
「だって俺の初めては真悠子に捧げ……」
「こら待て。それ以上言うと埋めるから」
真悠子が激怒モードになる。
「ははははは……」
肩をすくめて笑う旋は真悠子をからかっているようにも見えた。
ーーーうーん……旋さんがいるとややこしいなあ。
小さくため息を吐くと隣の悠真がツンツンと私をつつく。
「なあ、旋さんパワーアップしてない?」
「悠真もそう思う?」
昔から“真悠子一筋“だったが最後に会った時はもちろん、基本はクールだったはずの旋が今はよく喋る。
何というか、一皮剥けた感じだ。
東京へ行って何かあったのだろうか。
「うん、何かあったな」
「あったね」
「東京行くとみんなあぁなるのかな?」
「どうだろうね?」
二人で首をかしげていると、悠真と私のコソコソ話を聞いていた律がふっと鼻で笑う。
「元々あんな感じだよ。家族と真悠子さんの前だけね。基本は変人だから」
律がため息を吐いた。
「でも帰ってくるとは思わなかった……」
律の家庭環境を思えば、そう漏らすのにも無理はない。