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キセイジジツ
第15章 距離
歴代の彼女とは必ず観覧車に乗った。
それが昼だろうが夜だろうが時間に関係なく、この狭い空間で微笑みながら甘い言葉さえかけとけば彼女達は頬を赤く染めて喜んでいたのに。
それなのに真悠子にはなぜ通用しないのだろう。
---もしかして真悠子は恋愛対象が男じゃねーのか?!
「真悠子ってその……レズなの?」
「んなわけないでしょ。一回刺してあげようか?」
思いついた事をすぐ口にしてしまうのも旋の悪いところだ。
「俺が嫌いならどんな男が好きなんだよ」
「そんなの決まってるでしょ」
「な、なに?」
「私が持ってないものを持ってる人」
「持ってないもの……?」
旋は首をかしげて考えている。
「旋には分かんないかも」
「何でだよ」
「まずは自分の悪い部分も認めてあげないと一生分かりっこないわ」
「悪い部分を認める……」
「旋は変わるつもりないでしょ」
「そんな事ねえよ」
「え、変わりたいの?」
真悠子が目を丸くしている。
---俺が変わりたいって思うのはそんなにおかしい事か?
「俺が変わったらどうするよ」
「んー、試しに付き合ってみてあげる」
「えっ」
「あんたのアホさ加減を叩き直してあげるわよ」
「それ、まじか?」
「ええ、無駄な嘘をついたりしないわ」
真悠子は肩をすくめて大げさに困ったような態度をとる。
「恋愛音痴の旋が変わるなんてありえないわ」
「うるせー。見てろよ、変わってやるから!」
「はいはい。楽しみにしてますーー」
真悠子がそう言うと旋は黙り込んだ。
どうすれば変われるか今から考え始めるのだろう。
---人はそんな簡単に変われないのよ。
真悠子はため息を吐いて旋へ顔を向けた。
旋が首をかしげる。
「なに、まだあるの?」
「あともう一つ、あんたに言っておきたいのはさ…」
真剣な眼差しで見つめてくる真悠子に、旋は少し戸惑った。
「りっちゃんの前での態度をどうにかして欲しいんだけど」
「は?」
「わざとチャラいキャラを演じてさ、あれイライラする」
「いいだろ別に」
「知ってる?りっちゃんそんなあんたにドン引きしてるって」
「ええっ!」
「気づいてなかったんだ。ドンマイ。でもまじだよ、これ以上そのままじゃ取り返しのつかない事になるよ」
真悠子が哀れむような目で旋を見つけると、旋は頭を抱えた。