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キセイジジツ
第15章 距離

あれから三人とも大好きなジェットコースターを手始めに制覇していき、時間の許すかぎり遊園地を満喫して、今は帰りの電車に乗っている。

はしゃぎ疲れた悠真は向かい合った座席に深くもたれかかり夢の中へと落ちている。

私もほんの少し眠っていたみたいだ。

「あー、いつの間にか寝てた。りっちゃん起きてたんだ。眠くなかった?」
「あぁ、うん。ほら荷物も見とかないとだったし」

静かに景色を眺めていた律に話しかけると緩んだ表情が向けられた。

「あ、ごめん!荷物任せて…りっちゃん誕生日なのに」
「えーいいよ。いつもの事じゃん。それに楽しかったからあんま眠くなかったし」
「そっか、うん。疲れたけど楽しかったね」
「うん。こんなに楽しかったの久しぶり」
「でもさーあの水にザバーンと落ちるやつさ、あれはひどかったよね。いくら夏でも風邪ひくって」
「ははっ、確かに。レインコート買ってもムダだったしね」

二人で軽く笑い合って、はぁーっと満足げにため息を吐く。

携帯で時間を確認すると午後6時を過ぎていた。
あと30分ほどで地元の最寄り駅に到着する。

律の考えてる事は大体分かっていた。

「りっちゃん…」
「なに?」
「誕生日おめでと」
「えっまた?…ありがと。でもそんな何度も言わなくていいから」

律が嬉しいような困ったような複雑な表情を浮かべる。そんな顔をするのは当然だ。

なぜなら今朝、悠真と律の家に迎えに行った時、第一声で「おめでとう!」と伝えていたのだ。

そして真人から援助されたお金も使い用意したプレゼントも渡してある。

昨年まではお菓子やら飲み物やらで毎年ろくなものを渡してなかったが、今年は奮発した。

いつも私や悠真の事を面倒見てくれる律は、ある事をきっかけに不眠症ぎみになってしまったため、今年は快眠グッズをプレゼントしたのだ。

すぐに開封した律は目を輝かせて喜んでくれて私達まで嬉しくなった。

そして心から願う。

ーーーりっちゃんにどうか安眠を。

「あの枕、今日から使ってね!」
「使いたいけど、洗濯は?」

使用する前には必ず洗濯する律がそこを気にするのは分かっていた。

「そう言うと思って洗濯済みでーす」
「えっ。…まじで?」
「大まじっす」
「さすが悠里!」

律が喜んで笑ってくれる。

簡単な事かもしれないけれど、意外とそれが難しかったりする。
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