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キセイジジツ
第15章 距離
「律、誕生日おめでとう。これプレゼント」
律は口を半開きにしたまま、掴んでいたテレビのリモコンを床に落とした。
ゴトンッ!という派手な音を耳にしながら、夢だろうか?と頬をつねってみる。
ーーー夢じゃ、ない。
それなら今、目の前にいる旋はニセモノだろうか。
そんな事を考えながら声を出す。
「え……何いきなり…」
「いきなりって、誕生日だろ」
「そうだけど…」
旋から“おめでとう“と言われる事も、プレゼントを貰う事も初めてで、何で今更?という気持ちが大きい律はそれ以上は何も言えずに旋を見上げていた。
何を考えてるんだろう。
ーーー私の事……嫌いなんでしょ?
幼い頃からの記憶が少しずつ浮かんでくるーーー
一番古い記憶は4歳くらい。
母の膝の上に座ってテレビを見ていると、小学校から帰ってきた旋によって突き飛ばして泣かされる事がよくあった。
小学生になってからは家の手伝いをしたり勉強を見てもらったり、とにかく母の近くにいると決まって旋は邪魔をしてきて母を“ひとりじめ“していた。
最初は母が好きで仕方ないから?と思っていたが、気づけば母がいないところでも嫌がらせをされるようになり、旋に対して嫌悪感を持つようになっていた。
しつこい旋には反抗はするだけ無駄だと気づいてからは無視してやり過ごしていたし
ここ半年間は平穏な日々を過ごしていた。
旋が大学を卒業して東京に行ったから。
なのに……何で?!
ーーー私には言わなくても、両親にくらい帰省するって連絡するはずだよね?
しかも、プレゼントって何?私の誕生日なんて今まで祝ってくれた事ないじゃん!
……意味分かんない!!
「………律?」
記憶に浸かっていた律は、ハッとしたように意識を取り戻して旋をジロッと睨む。
旋は首をかしげて訳が分からないというような顔をしていた。
「……いらない」
「え?」
「プレゼントなんていらないっ!!」
「ちょ、律っ!」
呼び止める母の声を無視して自分の部屋に走る。
ーーーむかつくっ。
悠里や悠真には、変わらないとね的な事を口走ったけど…
今までの仕打ちを考えたら簡単には許せない。
ーーー私が何した?
もう、無視してやり過ごすなんてできない。