この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
キセイジジツ
第15章 距離
「真人兄ちゃん、用件はこれだけ?」
「いや……」
何となく他に話があるんだろうなと思って尋ねると、真人はスッと真面目な顔になる。
「結局、どうなったんだ?」
真人が遠回しに質問するのは珍しい。
だけど何の事か分からなかった。
ーーーりっちゃんの事かな?
律の誕生日プレゼント代はほとんど真人が出してくれたようなものだ。
結局、何を購入したのか気になるのかもしれない。
「…りっちゃんのプレゼントの事?」
私が返すと、真人はガクッと頭を垂らした。
ーーーあれ。違った?
うーん、と考えていると隣の悠真がははっと笑う。
「違うよ悠里。たぶん真人兄は長田さんとの事を聞きたいんだと思うよ」
「あっ、そっち?!」
悠真から真人に顔を向けると、真人はコクンと頷く。
「そうだ。長田とは上手くいったのか?」
ーーーははは…“長田“呼ばわりなのね。
苦笑いしながら頷くと真人はホッとしたような表情を浮かべた。
「ならいい。でも俺はまだ完全に認めた訳じゃない。健よりは長田の方がマシな気がするから一時的に認めてるだけ」
「マシって…」
「長田は良いやつっぽいけど、もし泣かされるような事があればすぐ別れさせるからな。一応、長田にも釘を刺しておく」
「えー…」
ーーー何か…親みたい。
「娘を心配しすぎな父親みたい…」
シンクロしたようなタイミングで悠真が言うと真人はふんっと鼻で笑う。
「父親みたいで結構。本当の父親が頼りないから俺を代わりだと思えばいい。悠里、分かったか?」
「…うん」
うん、と言わないとこの話が終わらない気がしてとりあえず返しておいた。
悠真は自分には関係ないとでもいうように洋菓子にかぶりつき、幸せそうに顔をほころばせている。
ーーーお気楽者め。
「…ていうか悠真、食べ過ぎでしょ!」
「へ?ほうはな?」
ーーーそうかな?じゃないし。
このままでは悠真に全部食べられてしまう。
慌ててマドレーヌを取り出しかぶりつくと、真人が軽く笑う。
ん?と真人を見るとテーブルに肘をついて悠真と私を穏やかな顔で見ていた。
ーーーうん。やっぱお父さんみたい。
「……そういや、さっき言いかけてたけど、りっちゃんのプレゼント…」
真人が言い終える前に私の携帯が鳴り響く。
着信の相手はーーー律。