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キセイジジツ
第15章 距離

「ほんっとなんなのって思うよねっ!?」

「りっちゃん…落ち着いて」


電話に出ると律はウチの玄関前にいると言った。

一瞬、怪談話のメリーさんを思い出しながら玄関に向かってドアを開けると、テンションだだ下がりの律が立っていたのだ。


悠真は明日用事があるとかで律に謝りながらお風呂に向かった。

そして私の部屋に移動して律の愚痴を聞いている。

うんうん、と頷きながら律を落ち着かせようとしているとーーー

「りっちゃん。旋の事嫌いなの?」

真人が口を挟むと、律は動きを止めた。

「え…」
「ちょっと、真人兄ちゃん!」

なぜか真人は自分の部屋に戻らず、私たちについてきていた。

黙って律の話を聞いてるかと思えば…
そんな初歩的な質問?!と思い私は声を張る。

「ねぇ、話聞いてた?」
「ああ、聞いてた。でも何で嫌いなのかなと思って」
「そりゃーお兄ちゃんなのに昔から嫌がらせしてくるからでしょ!」

私がそう言うと真人は更に首をかしげる。

「俺の悠里に対する態度は普通じゃないけど……」

ーーーえ、自覚あったんだ。

真人は腕を組んで考え込む素振りを見せていた。

「…普通の兄は妹に対してそんなもんだろ」
「えー?」

律を見ると口を半開きにして真人を見ていた。

「男は何だかんだでお母さんが好きだから、りっちゃんにヤキモチ妬いてたんだろ」
「えっでも…」

律が納得できないという態度で声を出す。

「お母さん関係なくても嫌がらせされましたよ!?」
「あーそれは、りっちゃんが可愛くてつい意地悪しちゃったパターンじゃないかな」
「えっ。可愛くて?つい?…そんな訳ないと思います!お兄ちゃん性格悪いですもん!」

キッパリと言いきる律に真人は目を見開いたが、すぐにふふっと笑う。

「まぁ確かに旋は性格悪いかもね。でも知ってた?あいつ愛情表現がド下手って事」
「は?」
「旋が彼女出来ても長続きしないの、りっちゃんも知ってるよね。長続きしないのは旋が愛情表現が下手過ぎるのがたぶん原因。本人は気付いてないけど」
「真人さん、それが私とどう関係あるんですか?」
「まだ分からない?」

ーーーそっか。旋さんは……

律は眉を寄せて訳が分からないという顔をしていたけど、私は何となく気付いた。

嫌がらせをしていた旋の本心は複雑に見えて、実はとても単純だ。
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