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キセイジジツ
第2章 再会

しばらく悠里を抱きしめていた。

腕を緩めて体を離す。


悠里が俺を見上げて微かに笑っている。

もう涙は出てなくてそっと息を吐く。


腕を伸ばせば簡単に手が届く距離。

愛しいから、これ以上は触れない。


自分の気持ちを吐き出したのは衝動を止めるため。

それ以上を求める自分を捕まえる。


悠里の気持ちを知って少し怖くなった。

俺は自分を保てるだろうか。


純粋な恋心が俺にはまぶしすぎる。


「たけ…ちゃん?」

名前を呼ばれただけで胸が痛い。


悠里の腕が伸びて手が俺の頬に触れる。

探るような瞳で俺の瞳を捕らえる。


「どうして…そんな顔してるの」

わずかに眉を下げて瞳を曇らす。


そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。

「どうしてかな…」


少しでも長く笑っていて欲しい。

「嬉しいのに…胸が痛むんだ」


俺が隣にいなくても笑っててよ。

「どっかおかしいのかな」


スッと腰を浮かして近寄ってきて俺の胸に手を置く。

「どこもおかしくないよ」


目を伏せて俺の手を取り自分の胸に持っていく。

悠里の心臓の音が手をつたって俺に流れてくる。


「私もたけちゃんと同じだから」

困ったように言って、笑う。


「どうしてだろうね」

考え込むように目を伏せる。


「たぶん…胸が痛むのはさ」


「苦しくて切なくて堪らないけど…」

長い睫毛が瞳を隠す。


「生きてる証であって…尊いことで…」


「必要なことなんだよ」

俺の手を掴んでるそこに力が込められる。


温かい色をした瞳が俺を包むように揺れる。

「だからおかしくないよ」


どうしてだろう…

「泣かなくていいんだよ」

静かに涙の粒がこぼれていた。


悠里の指が涙をぬぐってくれる。

胸の痛みが引いていく。


どうしてだろう…

この子はどうしてこんなにも
俺を揺さぶるんだろう。


「悠里…ありがとう…」

ありきたりな言葉しか出てこない。


悠里が俺を抱きしめてくれる。

「私の前では泣いていいけどね」


俺はきっと眉が下がって情けない顔をしているに違いない。

「こうやって隠してあげるから」


思わずフッと笑ってしまう。

頭の上でフフッと笑う声が聞こえた。


「本当に、ありがとう」


俺はそっと目を閉じた。
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