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キセイジジツ
第4章 発覚
寝れねぇと思えば思うほど焦って眠れなくなり、悠真が最後に時計を見たのは午前4時を過ぎた頃だった。
それでも神経を使い過ぎた脳はとうとうダウンしてしまい、いつの間にか眠っている。
何も予定がなければこのまま誰にも邪魔される事なく眠っていられるのだが、今日の悠真には外せない〈予定〉がある。
その予定を知った俺は、今まさに悠真の部屋の前に立ってこぶしを握り、ドアをノックした。
返事はない。まだ寝ている事は十分に承知でノックを続ける。
時刻は午前6時。早起きは得意な方だ。
腕時計を見つめてからもう一度ドアに視線を移し「悠真ー」と名前を呼びながらノックをする。
まだ返事はない。ドアノブを握って一応「入るぞー」と声をかけてからドアを開けた。
部屋に入ると荷物を詰め込んだボストンバックがまず目に入った。
おそらく好きなだけ向こうで過ごすつもりなのだろう。
こっちに帰って来たのが昨日で正解だった。
昨日でなければ、予定の意味を知る事は出来なかっただろう。
ベットに目をやるとタオルケットもかけず、うつ伏せの体勢で片手と片足だけベットから投げ出して寝ていた。
おかしい。こいつは寝相も悪くなければうつ伏せで寝る事なんてほぼなかったと記憶している。
ではなぜこんな状態で?……答えは簡単だ。
おそらく〈気付いたら寝ていたパターン〉だろう。
そう結論づけてベットの前に腕を組んで立つ。
「悠真、おい、起きろ」
眉がピクッと動いた。
眠りが浅いのかもしれない。
「悠真、朝だぞー起きる時間だぞー」
次は頬が動いた。そろそろ起きるか?
「ゆーまー、早く起きないとぉー、お兄ちゃんがー、ほっぺにちゅーしちゃうぞぉーー?」
「んやめろぉぉぉぉ!!」
悠真が叫びながらガバッと起きた。
ぶりっ子風に声をかけたのが良かったのだろう。
起きてくれて良かったが、お兄ちゃんはちょっぴり寂しいぞ。
「起きたな。おはよ」
ハァハァと荒い呼吸をしながら俺を見上げる。
「30分後に家を出る。それまでに準備しろ」
「は?」
次は眉をひそめて聞いてくる。
「明日のつもりだったが、やっぱり今日行く。特別に俺の車で連れてってやるから準備しろよ」
「………分かった」
悠真が素直に返事をしたので、俺は部屋を後にした。