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キセイジジツ
第5章 疑惑
店内に入るとすれ違う子や商品を触っている店員、レジにいる子とその接客をする店員が俺を凝視した。
口元に手を寄せてる子、友達同士でヒソヒソ話してる子達、商品を持ったまま固まる店員の視線を感じて、いたたまれない。
周囲からの視線と俺の気持ちに勘づいた悠里が俺の腕を掴んだ。
「ね、たけちゃんはあっちで待ってていいよ?」
「えっ…」
「ほら、男の人いないし、無理しなくても…」
「…いや、平気。悠里が選ぶの見たいし」
そう言って悠里の手を握る。
悠里は「いいの?」と目だけで聞いてくる。
それにうなずいて返事をする。
「何が欲しいの?」
「…あ、イヤリングが欲しいなって…」
イヤリングがあるコーナーに俺を引いて行く。
目元を緩めてさまざまなデザインのイヤリングを手にしては見つめている。
そんな悠里を見つめていると一人の店員が近付いてきた。
「どんなのをお探しですか~?」
「あっ…シンプルだけど可愛いイヤリングとかありますか?」
「シンプルな感じですね~…」
店員がパパッと選んで悠里に渡す。
「こんな感じでどうですか?」
一つはピンクサファイアがはめ込まれたハートのイヤリング。
もう一つはゴールドに輝く星が垂れ下がった揺れるイヤリング。
最後は片方がネコの顔、片方が肉球になっているイヤリング。
「すっごく可愛い!!」
一目見て、興奮気味に店員に顔を向ける。
確かに俺が見ても可愛いなと思うんだから悠里が気に入るのはあたり前だろう。
何より店員のチョイスが良い。どれも悠里に似合う。
「全部可愛いな」
「うん!……でも、どれにしよう…」
三つの中からどれに絞るか迷ってるようだ。
そんな悠里を見て店員が口を挟む。
「迷うなら、彼氏さんに選んでもらうのもアリだと思いますよ~」
「えっ…いやっ……」
頬を赤く染めて戸惑っている。
「そうだな、俺が選ぶよ」
「…いいの?」
三つを見比べてみるけど迷った。
そしてある結論に至る。
「全部にしよう」
「え?」
「俺が買ってやる。…あ、お会計お願いします」
「ちょっ…!」
全部店員に渡してレジに行く。
引かれる手を焦って止めようとするけど男の力には敵わないと分かると大人しくついてきた。
「もぉ~」と言いながら頬を膨らます悠里が最高に可愛い。