この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
キセイジジツ
第5章 疑惑
涙を流して誤解も解けてスッキリした悠里は「泣いてごめんね」と謝ってきた。
そんな悠里を見てると長田との間には本当に何もなかったのだと実感した。
長田だって見知らぬ女の子に変な事をするようなやつではないし、悠里は長田を避けるどころか自分からお礼を伝えていたし、俺が無駄に疑い過ぎなんだよなと納得した。
「あー…帰りたくなくなってきた…」
「え、どうして?」
「んーだって、ウチには真人がいるし」
「あっ。そっか…」
「ふっ…忘れてたろ。あーあ、帰ったら真人に悠里を取られるんやろなぁ」
「ははは……」
悠里は苦笑いをしている。
真人の過保護ぶりを思い出してるのだろう。
しばらくお互い黙っていた。
「…もう着くよ」
「うん…」
家が見えてきて駐車スペースに車を停める。
シートベルトを外して悠里の方に体を向ける。
「ね、悠里。キスしていい?」
「えっ…うん…」
「ダメって言ってもするけどねっ」
悠里の左頬に手を添えて顔を固定し、唇に触れる。
「んっ……」
温かくて柔らかい唇から伝わる、ほのかに香る甘い匂い。
角度を変えて唇を味わうように優しくキスを落とす。
そっと耳に触れて「あっ…」と唇が開いた瞬間に舌を滑り込ませる。
「んんっ!」
舌を絡ませると感じるコーヒーの残り香が俺の脳を刺激する。
コーヒーの香りを奪うように悠里の舌を犯していく。
「んっ…ふっ…」
悠里の体から力が抜けて腕を強く掴まれた。
とろけた瞳が俺を煽ってくる。
そこで唇を離した。
目を細めて俺を見つめる。
「もう終わり」
そう言うと「え?」という表情をする。
「これ以上すると止まらなくなるから」
「っ……そ、だね」
小さくつぶやいて目を伏せる。
「まだしたかった?」
「えっ……」
困惑した瞳が俺を捉える。
「俺の事、欲しいの?」
「っ……!」
耳から顔の順に赤くなっていく。
悠里の体を引き寄せて抱きしめた。
「俺の事、好き?」
俺の胸の中でコクンと首を下げる。
「俺も悠里が好きだよ」
またコクンと首が動く。
「悠里の全てが欲しい」
背中に回された手のひらが俺をギュッと抱きしめる。
「でも…続きはまた今度」
悠里から体を離し、おでこにキスを落とす。
「家に入ろう」
「うん…」
手を繋いで玄関のドアを開けた。