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キセイジジツ
第5章 疑惑
祖母宅に来て5日目の朝。
俺は携帯を見つめて「ははっ…」と笑っていた。
遡る事3日前…
2日目は祖父の墓参りをした。
墓参りと言っても墓はない。
祖母宅の横道を登って行くと小さな本堂があり、そこに祖父は納骨されている。
基本的にはお坊さんが管理をしてくれていて手入れをする必要はないのだが、祖父と会話をするかのように骨壷を拭く祖母と共に俺達も周辺をきれいに拭いた。
3日目は一人暮らしにしては広すぎる祖母宅を隅から隅まで掃除した。
祖母はまだまだ元気だし「そんな事せんでよか」と言うのだが、やはり高い所の掃除は行き届いてないので背のある真人と俺で掃除したのだ。
悠里はひたすら拭き掃除担当。
4日目は祖母の代わりに食事を用意し、向かいの森山さんもお誘いしてみんなで食事を楽しんだ。
森山さんと話をする祖母は一瞬で若返ったような雰囲気で顔を緩ませていた。
真人も悠里も俺もそれが嬉しくてずっと笑っていた。
そして今日。
「よく我慢したなぁ…」と思いながらラインのメッセージを読んでいる。
『確認するから待ってて』と返信して居間へ行くと悠里が祖母と朝食の準備をしていた。
「あ、ゆーま。おはよ~」
「おはよ。…ゆーり、ちょっと…」
俺が手招きすると首をかしげながら近付いてくる。
「おばあちゃんごめん!ちょっと抜けるね」
祖母にきちんと断りを入れている。
「なぁに?」
「健兄ちゃんに会いたい?」
悠里が「えっ」と目を見開く。
「健兄ちゃんは会いたいみたいだよ」
「…あ、あいたい…」
「じゃ真人兄には俺と二人で出かけることにして、健兄ちゃんと出かけてきたらいいよ」
「…いいの?」
「もちろん」
「ありがとう!」
そう言って俺に抱きついてくる。
俺はこれだけで嬉しいよ。
「朝ご飯食べたら秦家に行こ」
「うん!」
台所へ戻って行く悠里を見てから座布団に腰を落とすと寝惚け顔の真人が起きてきた。
「おはよう」
「おはよ。あ、真人兄ちゃん」
「ん?」
「悠里と俺、今日出かけてくる」
「どこに」
「バス乗ってイオ●行こうと思って」
「二人で、か?」
「うん。りっちゃんの誕生日プレゼントを二人で選ぼうと思って」
「…そうか。分かった。気をつけろよ」
真人はそのままシャワーを浴びに行った。
すぐにラインを送り、悠里と朝食を急いで済ませて秦家へ向かった。