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キセイジジツ
第5章 疑惑
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「今回も面白かったな~」
「シリーズで今回が一番じゃないですか?」
「確かに。まさかあそこで主役の親友が現れるとは思わなかった」
「ですよね。すでに敵にやられたと思ってましたもん」
「俺もそう思ってた。しかもあの終わり方…まだ続くだろうな」
「いくつか伏線を残してるし続くでしょうね。いや~もう撮影とかしてるのかなぁ~」
「どうだろうな。続編が決まるとすぐニュースになるけど今作が公開したばっかだから、情報が解禁されるのもしばらく先だろうな」
「へぇ…恭介さん詳しいんですねぇ」
映画を見終えて歩きながら感想を言い合っている。
こんな風に誰かと感想を言い合えるなんて久しぶりで俺のテンションは上がっていた。
映画が始まる前、自己紹介を済ませてから好きな映画について少し話した。
俺はどちらかと言うと王道ものの作品よりも特殊な作品の方が好きで、小学生の頃はそれが変わってるとは思っていなかった。
中学に上がって友達と映画を見に行こうってなった時、俺の趣向を分かってはくれても共感してくれる友達はいなくて、そこで初めて自分は少数派なのだと気付く。
そしていつも友達が見たい映画を見ていた。
それはそれで楽しいけれど友達の多くは見たら満足するタイプばかりで、感想を言い合うなんて事はした事がなかった。
そんな時に姉から宇宙人シリーズの二作目が公開された事を聞き、姉と二人で見に行った。
姉は人よりずば抜けて頭が良い人で、そんな姉が漏らす感想は製作側の人間が話してるのではないかと思うほど作品を深く理解していて愛情を感じさせる内容だった。
それからは姉とよく映画を見に行ってたのだが、姉が東京に行ってから今日まで、どんなに見たい作品があっても映画館を訪れる事はなかった。
そして偶然現れた、同じ趣向を持つお兄さん。
恭介さんに少数派としての悩みを漏らすと「分かるよ」と言ってくれた。
「俺も昔からこういう系統の作品が好きで、この良さを分からない周りをおかしいと思ってた。でも感じ方って人それぞれだし、みんな同じだったら同じ系統の作品しか存在しなくて、それこそ宇宙人シリーズは生まれてこなかったかもなって思ってさ。そう思ったら少数派でも楽しめるだけでいーやって思えたんだ」
そう言われて俺の価値観が揺るがされた。
目から鱗とはこの事だなと思いながら映画の始まりをじっと待っていた。
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