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第5章 告白

「過去を知った後でも、知る前と全く同じ印象。」

「…それは、どういう…？」

「正直…同情はした、と思う。」

"同情"という言葉に身体が固まった。
それに気づいたのか、また手を強く握られた。

「でも、下品な偏見や悪意のある偏見は一切ないよ。むしろ、そんな偏見を持つ奴の気が知れない。そんな奴がいたら、許せない。」

一ノ瀬さんの手が、震えている？

「だから、俺は…話を聞いて、…悔しい。」

悔しさで…震えているの？

「過去の…その…男にも、過去を変えられない事にも、どうやったら過去を払拭させてあげられるのか分からない自分にも。」

「え…」

「イライラして、悲しくて、やるせなくて、…悔しい。」

「いっ、ちのっ、せ、さん…」

一ノ瀬さんの感情を押し殺して話す姿に、胸が苦しくなって、また涙が溢れてきた。

「知花ちゃんが納得出来なかったら、ごめん。ただ…"どう思ったか"と聞かれたら、俺はこれしか答えようがない。」

「いちの、せっ、さん。ごめっ、なさっ…。ひどいこと聞いて、…ひっ、く…ホントにごめんなさい！…そんな顔、しな…い、で…」

私はホントに人を見る目がない。
一ノ瀬さんにこんな顔をさせて、こんな事を話させなきゃ分からないなんて。
美怜にしたように…
優しさに漬け込んで、ひどい事をしたんだと今になって自覚した。

「ごめんなさい。私、ホントにごめんなさいっ。」