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この出会いは…
第1章 最悪な出会いと最低な再会
「おいっ!!」

おそらく痴漢もその波に紛れて電車を降りていこうとしたのだろう。
一ノ瀬さんが声を上げるも、痴漢はその場から忽然と消えてしまったみたいだった。
ほっとしたのも束の間、次の瞬間には一ノ瀬さんに手首を掴まれ、『行くよ』と電車から引っ張り下ろされていた。
追うつもりなの?
しかし、私は恐怖からか腰が抜け、その場に崩れ落ちてしまった。

「知花ちゃん!?」

慌てた一ノ瀬さんが手首を掴んでいた手に力を入れたので、反射的にその手を振り払ってしまった。

「や、…あの、ご、ごめんなさい。」

驚いた顔をしたけど、すぐに心配そうな顔に戻った。

「あの…違うんで、す。ごめんなさい。その…」

思わず手を振り払ってしまったことに焦る。
一ノ瀬さんの善意を振り払ってしまったのだから。

「大丈夫?とりあえず、そこのベンチまで歩ける?」

私の前にしゃがみこんで、電車に乗る前と同じ優しい声で話しかけてくれた。
その声色に安心して一ノ瀬さんを見ると、先程以上に心配そうな顔をしていた。

「手は貸さない方がいい?」

なんて言って少し苦笑いをした。

「いえ、あの。ありがとうございます。すみません。」

なんとかベンチに座って、洋服の汚れを払う。
汚れを払っている間にいろいろ思い出してしまって、また身体を震えと嘔吐感が襲う。
痴漢にあったんだ。
そう思うともう涙まで止まらなくて、右手は口元を覆い、左手は膝の上で握り締めて、震えと嘔吐感に耐えていた。

「これ、飲めそう?」

一ノ瀬さんが近くの自販機でミネラルウォーターを買って、私の前に差し出してくれた。
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