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この出会いは…
第8章 彼の家
「靴がない。」

「え、あっ…。ええぇーーー!!」

ホントだ。靴がない!
みんな帰ったって事!?

「…とりあえず、入る?」

「えっ…はっ、はいっ!」

え、え、えっ!
どうしよう。いきなり二人きりとか!
廊下を進む一ノ瀬さんを追いかけてリビングに入ると、ホントに誰もいなかった。
私はリビングの入り口で茫然と佇んでいたが、一ノ瀬さんはソファーまで歩いて、テーブルに買い込んだお酒を置いていた。
テーブルに何か置いてあったらしく、拾い上げて見ていた。
そして、大きなため息をついた。

「何か…あったんですか?」

「いや、なにも…。はぁ、見なくてもいいよ。」

「え、気にっ、なります、よ?」

「はい、見る?」

手渡されたメモを見て固まった。

"邪魔者は退散しまーす 滝本
一応、気を利かせたつもりでーす 星
騙してごめんなさーい 琴莉
知花をよろしくお願いしまーす 美怜"

みんな…
みんなして面白がっている!!!

「なんか、いろいろごめんね?」

一ノ瀬さんがソファーに座って、もう一度ため息をつく。

「いっ、いえ!美怜たちも…すみません。」

二人きりだと意識してしまったから、心臓がドキドキして落ち着かない。
ちょっとの沈黙も耐えられない。

「あっ…と、私っ、これ、一応冷蔵庫に入れてきますね?」

テーブルの上のお酒を運ぼうとビニール袋に手を掛けた。

「あ、重いからいいよ。」

代わりに持とうとしてくれた一ノ瀬さんの手が私の手に触れて、思いっきり手を引っ込めてしまった。
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