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第8章 彼の家

「知花…あの人と仲良くなったの？」

席に戻ってすぐ、心配そうな顔をした琴莉に話しかけられた。

「え、あ…仲良くって程では…」

「なんて言われてたの？」

「あっ、違うよ。この前、一緒に会社の向かいのカフェに行った時に多く払ってもらっちゃったから…」

私の言葉に琴莉がポカンとした顔をした。

「あれ？一ノ瀬、解決したの？」

「あぁ、知花ちゃんがね。」

「「「はっ？」」」

星さんと琴莉、そして美怜の声がハモった。

「待って、話が見えない！」

「あの人、知花に嫌がらせしてたのよ。」

「えぇー！？」

「こっ、琴莉！私、いっ、嫌がらせなんかされてないよ？」

「いや、あれは牽制という嫌がらせだろ。」

あぁ、星さんまで話を膨らませるから、美怜がどんどん心配顔になっていく。

「なんて言われてたのよ？」

美怜が『全部話なさい』と、詰問の目をして聞いてくる。

「うぅ、言わなくちゃ…ダメ？」

一ノ瀬さんの前で？
一ノ瀬さんを見て助けを求めたけれど、『俺も気になるな』なんて言うから逃げられない。

「こっ、今年のクリスマスは、譲ってあげる…と言われ、ました…」

「「はぁ？」」

美怜と琴莉が身を乗り出す。

「あっ、でもっ！全然笑って、だよ！？嫌みじゃないよ？たぶん…」

二人が身を乗り出したまま、呆れた顔になっていく。

「あと、お金受け取って貰えなかったから、今度は私が奢る約束をしたの。それだけ！」

ばーっと勢いで説明すると、二人が同時にため息をついて、星さんが笑い出した。