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第8章 彼の家

前回お邪魔した時と同じで、あまり物が置いてなくて、スッキリと片付けられたきれいな部屋だ。
私の部屋よりきれいな気がする…
苦笑いしながらコートを脱いで、マフラーとバッグと一緒にソファーの横に置いた。

さっそく用意しなくてはと、袖を捲って手を洗っていたら、携帯が鳴った。
手を止めて確認すると、一ノ瀬さんからのラインだった。

"お疲れ様。もう、うちに着いた？
こっちはもう少しで終わるよ。
20時半には帰る。"

20時半！！
って事は今から一時間もないっ！！！
い、急いで支度しなきゃ！！

一ノ瀬さんには、ちょうどお家に着いたところで、今から料理を作ると返信して、慌てて料理に取りかかった。
買い物に時間をかけてしまった事を後悔したけれど、キッチンには調理器具がしっかり揃っていて、使いやすくて捗った。

時計の秒針の音に急かされながら、なんとか料理を作った。
シーザーサラダにクリームシチュー。
ホウレン草のキッシュに骨付きチキン。
あとは、このチキンをオーブンで焼くだけ。
オーブンをセットして、一息つく。
時間を見るともうすぐ20時半。

「ふぅ、なんとか間に合った…」

キッチン周りを片付けながら、一ノ瀬さんを待った。
ダイニングテーブルに料理を並べていたら、チャイムが鳴った。
インターフォンを見ると一ノ瀬さんで、オートロックの開け方を聞いてボタンを押して、私はそのまま玄関に向かった。
コツコツと足音が聞こえてくるのを待って、鍵を開けてドアを開いた。