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この出会いは…
第8章 彼の家
「………。」

どうしようっ!
なんか言わなくちゃっ!!
どうしようっ!
なんて言うのが正解なの!?
わっ、私、泊まるつもりなんて…

「あっ、私、着替え…持って来て、ない、ので…」

「…いいよ、服なら貸すから。」

そうですか…

「はっ、歯ブラシ、とか…」

「ストックがあるよ。」

うぅ…そうですか…

「えっと…しっ、下着も…な、い… 」

「お風呂入ってる間に洗濯乾燥機回すよ。」

そっ、そうですか…

「えっと、あの…ご、迷惑じゃ…」

「俺が誘ってるのに?」

…そうですよね。
あぁ、なんて返そう…
一ノ瀬さんの腕の中で、今日何度目かの心拍数の急上昇に、頭がクラクラする。
キス出来た事だけでも驚きで、自分が信じられないのに…
男の人の部屋で一日過ごすなんて…
なんて返せばいいんだろう。

言葉に詰まっている事が気まずくて、思わず一ノ瀬さんの洋服を握り締めていた。
私のその仕草に気付いたのか、一ノ瀬さんが私の頭にポンポンと触れた。

「いち、の、せさっ…。わっ、私…」

「21時過ぎから映画見始めたから、これ終わると日が変わるよ?」

まっ、全く考えてなかった…!
終電の時間も気にしてなかった!!

「どっ、ぅしよっ…私、終電…」

「あのね。今から電車で帰すわけないでしょ?」

ぎゅっと腕の中に閉じ込められた。

「帰るならタクシー呼ぶから。」

「はい。」

「とりあえず、ケーキ食べる?」

そうだ!
ケーキの存在も忘れてた。
プ、プレゼントも渡さなきゃ!!

「わっ、私、お皿とか用意してきますっ!」

素早く一ノ瀬さんの膝の上からおりて、キッチンへ向かった。
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