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第8章 彼の家

目の前で知花ちゃんがソファーの隣に敷いてあるラグの上に寝転びだした。

「おっ、おやすみなさいっ！」

そう言って毛布を頭から被る。
ちょっと待って。
それはさすがにダメだろう。
この天然具合、慣れたとはいえ、どうしたものか…

「……分かった。じゃあ、一緒に寝室に行こう。寝るんじゃなくて、話をしたり、雑誌や本を見たりして、起きていよう。」

「あ…」

「それならいい？」

赤くなりながらもようやく首を縦に振ってくれた。
そんな知花ちゃんの手を引いて、毛布も持って、寝室に入った。

その後は、壁にもたれながら二人並んでベッドに座り、足にだけ布団をかけて、いろいろな話をした。
小さい頃から学生時代までの話。
趣味や特技の話、仕事の話も。
１時間くらい話していたら、知花ちゃんがうとうとしてきたのが分かった。

「眠くなった？ちゃんと布団に入りな？」

目をしぱしぱさせて起きてようとする知花ちゃんがかわいかったが、横になって布団をかけるように促した。

「いちの、せ、さん…寝ない、なら…寝ません…」

「分かった、寝るから。ほら、早く寝な。」

肘をついて知花ちゃんの方を向きながら、横向きに寝転んで、知花ちゃんにも寝るように言うと、おずおずと隣に横になった。
もう片方の手で知花ちゃんの頭に触れる。

「おやすみ。」

頭に触れた俺の指をぎゅっと掴まれた。

「いち、の…せさっ」

「うん？」

「……おやすみ、なさい…」

小さく呟くように答えて、目を閉じた知花ちゃんは、すぐに寝息をたて始めた。