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第9章 彼の家族

「知花ちゃん、ごめんね？いきなり連れてこられて、こんな…」

一ノ瀬さんがため息をつきながら、申し訳なさそうな顔をした。

「私、楽しいですよ？皆さん、いい方ばかりですし。一人で過ごすより全然いいです。」

「ホント？」

頷いて笑う私を見て、一ノ瀬さんが表情を柔らかくする。

「だったら良かった。ありがとう。」

笑い合っていたら、お兄さんにからかわれるし、柚ちゃんからは『ミニーちゃん！』と催促された。
お父さんも一ノ瀬さんと同じ様に謝ってくれて、リビングに戻って来た遥さんも、ごはんを準備中のお母さんと翠さんも何かと話し掛けてくれた。

質問攻めに合うと少しテンパッてしまうけれど、皆さんが気を遣ってくれていることも分かるから、それが嬉しかった。
温かく受け入れてもらえて良かった。

「出来たわよぉ～！」

お母さんのその一言でみんなテーブルに着く。
翔くんを翠さんにバトンタッチして、私もテーブルにお邪魔させてもらう。
大人数なので、男性陣はリビングで、女性陣＋翔くんはダイニングで食べることに。
お鍋も２つ作ってくれていた。

「知花ちゃん、ビールは飲める？」

「あ…頂いていいんですか？」

「いいに決まってるじゃない。じゃあ、まずは、カンパーイ！」

お母さんに渡されたグラスに、遥さんがビールを注いでくれて乾杯をした。

「さ、女子会しましょ！」

お母さんがハニカミながらそう言って、晩ごはんが始まった。