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この出会いは…
第9章 彼の家族
パタン…

お母さんに挨拶をして、2階の一ノ瀬さんの部屋に入った。
ベッドと一人掛けのローソファーとガラステーブルが置いてあるだけの部屋。
二人きりになって、そこで、初めて気が付いた。
『大丈夫です』と言った時の一ノ瀬さんの驚いた顔の意味が。
ベッド以外では寝れない。
部屋には寝転べるサイズのラグもない。
掛け布団くらいは借りてくればよかった、かも…
ドアを背に立ち尽くした私を見て、一ノ瀬さんがクスクス笑う。

「布団、運んで来ようか?」

「いえ、あのっ、私、ここで…」

小さなローソファーまで移動して、そこに座る。

「無理でしょ。身体痛くなるし、風邪引くよ?」

「でっ、でも…」

「じゃあ、この前みたいに起きてようか?」

この前…
そう言われて思い出したのは、腕枕で抱き締められていた翌朝の状況。
テンパりだした私に気付いて、また笑われた。
笑いながらベッドに入って、布団をめくって、私を呼ぶ。
一ノ瀬さんは、おずおずとベッドに近づいた私の腕を掴んで引き寄せ、あっさりと自分の足の間に私を座らせた。

えっ?えっ!?
"足の間に座る"ベッドバージョン!!!
テンパッている間に後ろから抱き締められて、私の心臓が跳ねたどころではない。

「はぁ、今日はごめんね。気疲れしたでしょ…」

「いえっ、大丈夫です。」

いや、今、この状況が大丈夫ではない。
心臓を口から吐きそうです。
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